アニマル泉

華氏451のアニマル泉のレビュー・感想・評価

華氏451(1966年製作の映画)
4.0
トリュフォーの初カラー作品。イギリスで撮影された初めての英語作品でもある。撮影はニコラス・ローグ、音楽はバーナード・ハーマン。赤が鮮烈だ。消防隊の車、壁が真っ赤だ。モンダーク(オスカー・ウェルナー)は赤いパジャマで寝具は黄色、妻のリンダ(ジュリー ・クリスティ)のパジャマも黄色という派手な色合わせだ。青も基調の色になっている。原作はレイ・ブラッドベリのSF。未来の管理社会では焚書が行われており、密告が横行しているなかで「本の人々」のレジスタンスを描く物語だ。本作の主題は「火」である。「火」が書物をメラメラと燃やし尽くしていく。トリュフォーが「本作の主人公は人間ではなく書物である」と述べているように書物愛に溢れている。まるで人を殺すように、一冊づつ厳かに燃えていく。書物と焼かれるビー・ダッフェルの場面はジャンヌ・ダルクの火刑のようだ。
一方の「本の人々」のアジトは川、雪、池といった「水」のイメージで描かれる。
モノレールが不気味だ。空中を走るモノレールは俯瞰の作家トリュフォーらしくない乗り物だからだ。いつもはあまり描かない空が強調される。車内で声をかけたクラリス(ジュリー ・クリスティの二役)がモンダークを誘う長いトラックショットもトリュフォーには例外的な青い空と白い雲が広がっていて、とても不穏になるのだ。冒頭に大量の書物が焼かれる場面、アパートの上の窓から子供が見ているカットが不意に挿入されて、その見た目として焼かれる書物の俯瞰ショットになる。俯瞰の作家トリュフォーらしい技法だ。
クラリスの学校は廊下だけで描かれる。ジャンプカットを使いながら廊下だけで描くのが面白い。フラーの「ショック集団」の伝説の廊下を思い出す。
トリュフォーの「高さ」の主題は消防隊の出動と帰還で活用されるポールだ。モンダークはポールが使えなくなり螺旋階段を上り下りする。クラリスの脱出は天井裏から、モンダークの逃走も屋根伝いで「高さ」の主題が活用される。
トリュフォーはオスカー・ウェルナーとかなり現場で揉めたらしい。「突然炎のごとく」の時の至福な関係とは真逆な結果となり、トリュフォーはウェルナーを二度と使わないと語り、実際二度と仕事をすることはなかった。