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ウルヴァリン:X-MEN ZEROのHicKのレビュー・感想・評価

ウルヴァリン:X-MEN ZERO(2009年製作の映画)
3.2
《アドレナリンMAX、安っぽさMAX、ハードボイルドアニメ超大作》

【整合性以上に作品自体が…】
完全なポップコーンムービー。シリーズとして整合性を失った戦犯的作品でもあり、はたしてビクターはX-MEN1作目のセイバートゥースなのかどうか。ただ、それはファンの解釈次第という事で実はそんなにネックだとは思わなかったりする。後の「ローガン」しかり2019年の「ジョーカー」など、描きたい事があるのなら制約を気にせず別の話にしてしまう手法には大賛成。ただ今回はそんな議論も無意味な程、作品自体が酷い。コミック/アニメを原作とした映画では無く、アニメを見ているような感覚の作品だった。この作品が一貫したテーマを描いてきたX-MENシリーズである事がさらに気持ち悪い。

【バタバタ】
作品のテンポの速さは異常。前半でローガンの幼少期からアダマンチウム移植までのシーンが詰め込んであり、作品全体として見てもダイジェストを見せられているような感覚。その中で、デッドプール含め原作の人気キャラを意味も無く続々と登場させ、バタバタと途中退場させてしまう展開は、不評だったX-MEN3の作風を踏襲してしまっている。テーマ性が薄いという時点で、それ以下。それにしてもガンビットがもったいない。

【安っぽい】
全てのCGが安っぽい。この一言に尽きる。技術による原因だけならそんな事思わないが、そもそも監督の求めた「バエるカット」が安っぽ過ぎる。これが作品全体に散りばめられてある。この異色な浮き足立つ作風から、「この監督はシリーズを全て鑑賞したのだろうか?」という疑問すら感じる。

【ただ、】
ビクターを演じたリーヴ・シュレイバーは渋くてヤバい。めちゃくちゃカッコいいうえに、めちゃくちゃ怖い。ケイラを演じた女優さんの演技も素晴らしく、ローガンと彼女のストーリーラインも良かったので、なんとか物語の中核として作品全体のカラーを調節して欲しかった。また、スリーマイル事故の史実と絡めた展開や作中のツイストも初鑑賞時にはワクワクした記憶がある。とにかく、もったいない。

【総括】
監督はこの映画シリーズやコミックを見ていたのか?それが率直な感想。言葉を選ばず言えばファンメイド作品の方が優れていたとさえ思う。のちに、ライアン・レイノルズが同役のリブートを成し遂げファンから賞賛を浴びた事も、今作が大失敗だった裏付けになってしまうハードボイルドアニメ超大作だった。
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