ホーガン

スリープレスのホーガンのレビュー・感想・評価

スリープレス(2001年製作の映画)
3.6
敬愛すべきダリオ・アルジェントの過去作から順番に再鑑賞、レビューしてみようのコーナー。その第12弾。

現在視聴困難な「オペラ座の怪人」を飛ばして本作をレビュー。「トラウマ 鮮血の叫び」、「スタンダール・シンドローム」、「オペラ座の怪人」と立て続けでアーシア・アルジェントを起用してきたが、本作では起用していない。2001年に製作された本作は、低迷するダリオが初期のジャーロに原点回帰したとされる。

たしかに音楽がゴブリン、殺人者視点、執拗でサディスティックな殺人シーンなどは原点回帰をしたとは言える。童謡(これの歌詞はアーシアが書いている)の見立て殺人で、殺人者は劇中小説に感化されているところは「サスペリアPART2」や「シャドー」にも似ている。物語はエラリー・クイーンの「Yの悲劇」を参考にしているようだが、相変わらず本格ミステリーのような重厚さは無く、行き当たりばったりの強引さと、序盤のヒントで真犯人が分かってしまうのはいつものダリオジャーロだ。

まず、音楽は現代風にアレンジされたゴブリンサウンドは良き。グロシーンも壁に女性の顔を打ち付けて歯を折るとか、これは「サスペリアPART2」でもあった痛々しいシーンがあったり、銃による顔面破壊、管楽器で顔をグサグサ、指の切断など、ダリオ作品の中でも屈指のグロ作品と言える。切り落とされたモックの首の表情が動くのも中々の出来。
カメラワークなど実験的で新しい演出を盛り込むのもダリオ作品の特徴とも言えるが、本作では床のカーペットを移動しながら延々と撮り続け、インしてくるのは足下の靴や影ばかり。最後は吊されて痙攣するバレリーナの影だけが写り、そこに切り落とされた首がインしてくる。これはショッキングな映像で本作最高のシーンであろう。なお、オープニングの列車の中での殺人もインパクトがあるが、社内を走る被害者を追うカメラの手ぶれが凄い。おそらくはダリオ作品としては初の試み。大きくぶれるカメラの映像をそのまま使うことで臨場感を出そうとしていると思うが、これも当時ぐらいから流行り出したフェイクドキュメンタリーなどの影響かもしれない。

あっけないラストはダリオ作品では普通なんだけど、本作のあっけなさはダリオ作品でも随一。ダリオ自身も実験的な演出などかなりがんばっていて、ピークは過ぎている中でも良い作品には仕上がっている。ラストを含む脚本がもう少し良ければねぇ。
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