このレビューはネタバレを含みます
やっぱりこの頃の映画を見ていると中盤から終盤にかけて急に面白く感じる。
特別なことは何もしていない。斬新なアイデアや思いがけない展開もない。ただ平凡な貧乏クリーニング屋一家の生活を描いただけがこうも美しい。
妹は母親が甥っ子にばかりかまうと泣いてしまうほどに母親好きであったのに。
叔母の練習のために髪を切られ大泣きして理不尽に怒られてる時は、まだ子供なんだから気持ち考えてやれよ…と思ったのに
「やっぱりいくわあたし、おじちゃんに家へ。だっておじちゃんたち寂しいでしょ。かわいそうだもん。母ちゃんだってかわいそうよ。私がいけば助かるのよ。」
彼女は髪を切られ泣いている時に言われた「誰かのために」という母親の言葉を誰よりもしっかり受け入れて自分で自分がどうすべきかを考えていた。立派すぎて何も言えない。
そんな彼女が最後に母親の似顔絵を持っていくのを見てさらに号泣。
妹に比べるとお姉ちゃんは年の割にどこか子供じみている。ただ、出ていくという妹の決断を聞いて素直に受け入れられず喧嘩になる姉もまた人間。
娘の晴れ姿を見る田中絹代の表情が素晴らしいです。というかあそこ一体のシーン、とし子役の香川京子も可愛いし、やり取りもいいし全部好き。
クリーニング屋の娘とパン屋の息子。そういえば山田洋次作品にクリーニング屋の娘と豆腐屋の息子の話があった。京都太秦物語
こんな時代でもう映画終了ドッキリがあったのか。たまに見かけるけど、時代もあってほんとかと思って騙された。