■概要
近未来、人々は全てを監視できるシステムが組み込まれる中。"物質D"と呼ばれる麻薬が横行し、人々を蝕む。
ある麻薬捜査官は大物ディーラーと取引のあると思われる人物のグループに潜入していく。ある日に上司から自分を監視する任務を与えられ、自分自身である麻薬中毒者の全てを監視し始める…。
■感想(ネタバレなし)
SF作家のフィリップ・K・ディック原作。
ブレードランナー(アンドロイドは電気羊の夢を見るか?)やトータルリコールなどの有名作品があるが、原作を元に実写映像にイラストエフェクトを入れた後にさらに塗りを重ねる独特の手法を取り入れている。
基本はトリップしている話になるのだが、幻覚なのか現実なのか見分けがつきにくいので、どこまで捜査官が蝕まれているか分かりづらい。
私が期待しているような闇ではなく、白昼夢のような。サラッと陰湿な出来事を描いているため少し物足りなさを感じる。
しかしキャストは豪華だし、言動のくだらなさやストーリー自体は魅力的。
ただもっとカタルシスが描かれるべきだった気がして拍子抜けしてしまう。
過去にも観たのだが再視聴してもやはり変わらなかったのは残念。
■感想(ネタバレあり)
・主人公はDに汚染されていた?
元々子供もいないとなると、あの初めの演説時点で既に侵されていたということになるので捜査官としてそもそも初めから薬物中毒者としてキープされ泳がされていたのだろうか。
・皮肉
監視システムが成り立ってしまっている時代に唯一の監視を免除されている組織が、薬物中毒者の更生施設。
そしてそこで物質Dの原材料が生産されていたというオチは秀逸。
結局は循環させられているだけで、個人では変えようのない大きな社会構造を揶揄している皮肉はきついジョーク。
・腐り切った策略にも関わらず淡い
結局主人公は薬漬けで脳が壊れた者だけが従事できる農場に行かせてDの原材料の栽培を暴くために壊されたという話。
これが上司がさらに上層部とダイナーで適当に会話されるだけで終わるのはあんまりにも軽く淡い…。
せめて組織に一太刀浴びせれたのかまで見せもしない後味の悪さは悪くないのだが、描写の軽さがどうしても物足りなさを感じる。
・ゆるやかな自殺を遂げた人々
原作者の薬物中毒で死んだまたは病にかかった人間を並べて
"受けるにはあまりも重い罰を受けた 遊び方を間違えただけ"
これがあまりにも価値観に相違を感じる。
売るのが悪いと根本的に思うが、同情的になるにはこの作品の主人公とは話は違うだろう。
もちろん社会が根絶しきらないことで起きた被害者であると言えなくはないが…。
このセリフでどれだけ日本は平和かを理解できるものになっている。