ごろちん

懺悔のごろちんのレビュー・感想・評価

懺悔(1984年製作の映画)
4.2
死体が墓から何度も掘り返されて庭の木に立て掛けられるさまは何ともオカルトチック。当然、その家族は驚くわけだけど、毎回完璧な出来栄えについ賞賛したくなる。

他にも小手伸也似の市長が窓から退散したと思ったら、次の瞬間玄関から入ってくるというワープはアブラゼ監督の十八番なんだろうか。そういった登場人物たちのコミカルな動きも魅力的。

本作ではある架空の市の独裁政治が回想シーンで流れる。それはまさにスターリンの全体主義を彷彿とさせる。凄いのはこの作品がペレストロイカより前に完成していたということ。実際、反ソヴィエト映画とみなされて公開禁止になったんだとか(『ジョージア映画祭2022』パンフ参照)

「祈り三部作」を振り返ってみると、それぞれ人間の弱さや原罪が描かれている。そして、祈り、贖罪をすることで人は救われると説いている。もしかしたらアブラゼ監督はソヴィエト政府の目に付くと分かっていながらもこの作品を完成させたのは、過ちを反省する力が母国にはまだあると信じ、贖罪を促したかったからなのかもしれない。

原子炉に対しても批判的な台詞が一部あって、その数年後にあのチェルノブイリ原発事故が起きたわけだから、アブラゼ監督は先見の明に長けた人とも言える。ジョージア人の誇り高い監督の作品が観れて良かった。
ごろちん

ごろちん