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極北の怪異/極北のナヌークのwtson322のレビュー・感想・評価

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カメラという避けられない"目線"を通じた啓蒙は、例えばレコードプレーヤーという西洋文明の利器に触れて驚くナヌーク、そして彼らの生肉食という未開文化を好奇の眼で映し出すフラハティの立ち位置に集約されるが、一方でその地に足のついたシークエンスの演出は彼らの生を淡々と受容し続ける。
最初の船のシーンやアザラシ釣りなど、観るものに"忍耐"を求めるロングショットはサスペンス映画さながらであるし、モノクロフィルムに描写される色味やぬめりの表現に圧倒される。雪と氷からなる美しい銀世界に異物のように映り込む人間という対比、動物の解体シーンにて皮をはいだ下に急に現れた脂肪の白さにギョッとしてしまうのだ。
また、人間の親しい友人としてフューチャーされる犬は、狼に通づる原始性をも持っている。繰り返されるカメラと犬らとの切り返しショットに、そうした恐怖の念が透けて見えたというのは考えすぎだろうか。
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