ろ

極北の怪異/極北のナヌークのろのレビュー・感想・評価

5.0


“人間が生きること、生活を送ることがどれほどドラマチックであることか”


リュミエール兄弟やキートンさんの映画を観たときと、まったく同じだ。
わぁっと気持ちが高揚して、絶えずにこにこしてしまう。
この満たされた想いを、どんな言葉で表せばいいのか分からないけれど、幸福感というのはきっとこういうことだ。
ああ、アキさんがすきなの、とってもよくわかるなぁ。


カナダ北部に住むイヌイット(エスキモー)一家の日常を捉えた今作。
船が難破したり、フィルムが燃えたり。さまざまな困難を味わいながらも、フラハティ監督は撮影を諦めませんでした。
そして極北を去るときには「もう1年いればいいのに」と別れを惜しまれるほど。
この映画は、イヌイット一家への敬意とあたたかいまなざしに満ちています。


極北で暮らす一家が食べるものは主に動物。
狩りで捕ってきたサカナやセイウチを食べるんですね。
ということは運が悪ければ、一日中なにも食べないことに。
いつ死んでしまうか、明日のことなんてわからない生活。
そのなかで、彼らは懸命に生きていきます。

その姿はまさに、哲学者たちが求めた理想の形。
スポットライトを当てるのは“いま自分はどうすればいいか”。
たべるものを探す、イグルーをつくる、体を寄せ合って眠る。
たくさんのモノが溢れるこの世の中で、あたりまえのように生きる人々は、「それって、しあわせなの?」と不思議がるかもしれない。
でもね、彼らの表情をみて。
大好物のアザラシをみんなで分け合い頬張る瞬間、こどもに狩りの仕方を教えるひととき、ほんとうに朗らかにわらっているんだよ。


浮氷をモリで突きながら進むサスペンス、吹き荒ぶ風に流されてゆく遠吠え、毛皮に包まりしあわせそうなナヌーク。


映し出されるすべてのものに、こころが動かされてなりません。









( ..)φ

はじめてのシネ・ヌーヴォさん!
すてきな劇場だった~~、あやうくDVD買いそうになった~~!
ぜったいにまた行きます!
(つぎはロシアンカルト映画祭をねらって・・・)
ろ