りょうた

極北の怪異/極北のナヌークのりょうたのネタバレレビュー・内容・結末

4.2

このレビューはネタバレを含みます

ドキュメンタリーで五本の指に入るほど有名な作品をやっと鑑賞した。正直、現代までに様々な作品が発表されていることもあり、当時の衝撃はすごかったと思ってしまうかと思ったが、全くそんなことはなかった。
この作品に至るまでに、一度撮り終わっていたものの、ネガを焼失させてしまい、再び取り直したという伝説的な作品、映画の冒頭にも書かれているが、全焼を受けて撮り方を変えた。それまでは、イヌイットの幾人かの人たちを撮っていたが、もっと良い撮り方があるとして、一つの家族を象徴的に撮る方法を考えたという。そうして主人公となったナヌークとその家族。ユーモラスで可愛らしいナヌークとその家族の姿が見れただけで、本当に満足している。あのような表情がとれたなら、それで十分、最高なのではないか。最近映画は表情がすべてと思うようになってきた。アザラシをしとめるシーンでアザラシとナヌークが氷を挟んで引っ張り合うシーンは、喜劇そのもの。動きを見ていると、チャップリンが演じていると錯覚してしまうほど。

この作品は、作品誕生の背景が示唆的で非常に面白い。全焼後、フラハティはカメラだけでなく、現像する道具も持って行ったという。その現像を任されたのは、映画というものをみたこともないイヌイットたちが手伝ったという。というのも、フラハティは映写機も持っていき、実際にイヌイットたちにラッシュ上映をしたという。イヌイットたちは初めて触れた映像に感動し、製作を積極的に手伝ったという。そういったことを通して、被写体と関係を結んでいったからこそ、あのような開けた表情をしたのだろう。もちろん、それだけではないが。

この作品がなければ、今日のドキュメンタリーは全く違った様相を呈していただろう。それは間違いないことだ。イヌイットが我々顔がアジア人に似ていることもあり、遠い場所なのだが、何とも不思議な感覚になる。しっかりと調べてはいないのだが、イヌイットにも蒙古斑がでるようだ。つまりは、我々と同じ先祖だということだ。
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