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デーヴのSPNminacoのレビュー・感想・評価

デーヴ(1993年製作の映画)
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アメリカでは嘘が一番嫌われるとか、かつてそんな話を読んでなるほどと思ったものだった。映画では意識不明となった本物の大統領が実は嘘つきで、その替え玉そっくりさんデーヴは嘘を演じる。つまり、何も知らないデーヴと国民に対して二重に事実を隠さなきゃない。ところが本物以上に人気を集めてしまうデーヴ。嘘も方便、ならばどっちの嘘を選ぶか。
アイヴァン・ライトマンはそもそも「取り違え/なりすましもの」としてマルクス兄弟『我輩はカモである』を踏まえてるはず(鏡のシーンとか)。でも1人2役のケヴィン・クラインには持ち前の品があって、デーヴは根っから善人で野球好き、アメリカ人の好む明るくイノセントな“田舎紳士”タイプだ。
本物を真似してもデーヴはプロンプターを使わない、それだけで信頼には充分。取り締まり警官相手のミュージカルでも素で即興に長けているのがわかるし、人を喜ばせたい思いに嘘はないから愛される。やがて地位が人を作り、嘘から出た真が彼を本物にする。首席補佐官(今より若くて細かったフランク・ランジェラ)以外、夫人やSP、スピーチライターらホワイトハウスにも良心がある。
いちばん肝心なのは、大統領といわず政治家に求められる「責任」をきっちり果たす、デーヴの落とし前の付け方だった。そして嘘は嘘でも良心から出た嘘は裁かれない、何もかもめでたしめでたしなパーフェクト・エンディング。
フランク・キャプラ風お伽噺であり、これぞ大らかなホラ吹き話=アメリカ伝統のトールテール!当時の議員からオリヴァー・ストーンまでご本人が登場するんだから、シャレが徹底してる。本物大統領は当時のクリントンがモデルだろうけど、もはやシャレにならない今の時代こそデーヴが替え玉やってほしいよ。
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