Jimmy

野ゆき山ゆき海べゆきのJimmyのレビュー・感想・評価

野ゆき山ゆき海べゆき(1986年製作の映画)
4.0
公開時は【尾道三部作】である『転校生』・『時をかける少女』・『さびしんぼう』の直後だっただけに、「相変わらず尾道を舞台にしたセリフ棒読み学芸会」といった印象を持っていたが、久しぶりに観てみると、全く異なる印象を受けた。

また、今回は、カラー版の「豪華総天然色普及版」に続いて、モノクロ版の「質実黒白オリジナル版」の2本(?)を見比べてみたので、この2本についても異なる印象を持った。

物語は、カラー版もモノクロ版も展開は同様。但し、編集や画像処理、音楽は異なる。

戦時中の尾道に男子生徒が転校してくる。ただ、子供の世界では「既に居る者と新参者の権力争い」などということを考えるものであり、子供どうしの「わんぱく戦争」が始まる。
転校生としてやって来た男子生徒は、鷲尾いさ子演じる昌ちゃんの異母兄妹。
そして、鷲尾いさ子を3人の男が好きになり恋物語の雰囲気を見せつつ、子供たちの相変わらずの諍いを見せ、更に(三浦友和演じる)本当の日本軍人も登場させて戦時の世相を描く試みがなされている。

カラー版は、在りのままの色を映し出している点で綺麗なのは勿論、時々使われる大林監督独特の映像処理(雷場面など)が際立つあたりは良い。

モノクロ版は、全編にわたってセピア色で描くことにより、まるで小津安二郎監督作品を観ているような感覚にとらわれる「本当に戦時中の物語が描くことを強調している」感あり。

どちらのバージョンも好きであるが、大林宣彦監督が本当に見せたかったのはモノクロ版であるような気がする。

いずれも、(公開時の印象とは異なり)1986年の時代から戦争ドラマを作っていたのは驚きであり、なかなかの佳作であると思い直した。
(※ 面白くなければ、カラー版とモノクロ版を続けて2本立て?で観ることは無理だと思う。)
Jimmy

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