モスマンは実在する

野ゆき山ゆき海べゆきのモスマンは実在するのレビュー・感想・評価

野ゆき山ゆき海べゆき(1986年製作の映画)
5.0
学校対抗の合戦を通して戦争は誤りだと気付いた子供達だが、戦争や、そもそも戦争を始めた親世代の行う身売りを止めることはできなかった。「こんな悲劇を引き起こすから戦争は良くない」というところに話が落ち着くのでなく、主人公たち少年の持つ男らしさへの憧れなども描かれ、そうした心理が回り回って戦争を引き起こすかもしれないというメッセージもあったように思った。主人公たちがお昌ちゃんという女性を見る目線は少しばかり男の持ついやらしさを帯びつつあるが、こうした男特有の悪い側面もまた主人公たちも親世代と根本では変わらないことを示しているようだった。

青木中尉の目元には邪悪そうな縁取りメイクがあり、それが伝染するようにお昌ちゃんの恋人の目元にも浮かび上がって「俺は男だから戦争に行く」などと言い始める。こうした、「有害な男らしさ」が伝染していった集合体のようなものとして戦争が存在しているような描かれ方も面白い。そして、戦争に加担する人物は徐々に人間らしさを失っていく。青木中尉は終盤にかけメイクがさらに濃くなり、傷も増え、エピローグに至っては顔面全てに包帯を巻いている。

エピローグで再びモノクロ画面に戻り、さながら映画「炎628」のように大人世代を抹消したい子供世代の怨念が溢れ出してくるようでグッときた。