こーべい

東京タワー オカンとボクと、時々、オトンのこーべいのレビュー・感想・評価

4.3
降りかかる苦労も明るくマイペースにはねのけていく「オカン」と、その愛情に包まれて自由気ままな生活を送っている「ボク」。母と息子の親子愛の物語。リリー・フランキーの自伝的映画。

何か特別なことがあるかと言うと、特に起こっていない。生活していれば誰でもお金に窮することはあるし、若いうちは目的もなくモラトリアムな毎日を過ごしてしまうし、当然病気人もなるし最後は誰でも死ぬ。
だからこそ自分の人生と重ね合わせられるところが必ずあるし、ハマったところは胸が熱くこみ上げる。

若い頃のオカンが歳をとった樹木希林に本当に似ていて、それがこの映画の成功要因だなと思っていたのだが、なんと樹木希林の本当の娘さんだったんですね。それを知るとオカンの人生がつながって見えるので余計にぐっとくるものがある。

東京に憧れて夢を追って東京の大学に入って、でも自堕落な生活をして酒、タバコ、麻雀に溺れる。就職もいい加減だけどなんとなく周りの人に拾ってもらっていつの間にか成功しました、っていう昔よく聞いたコース。現代で考えたらものすごく贅沢なことをしていると感じてしまう。今、こんな余裕のある生活できる大学生って一般的ではないと思う。「こんなボクだけど」の自虐発言も、ただの道楽。文面通り受け取れないというのが世知辛い時代だと感じる。