全ディズニー映画の中で最も好きな作品。紛うことなき名作だ。荘厳な音楽にのせて大聖堂の巨大さを印象付けるオープニングで心を掴まれる。最近また見返して、音楽や画面の美しさのレベルの高さに改めて驚く。
『美女と野獣』『アラジン』『ライオン・キング』が立て続けに発表され、ノリにノッていた時期に公開された今作は、従来のディズニーのステレオタイプから逸脱した、過激ともとれる描写が魅力のひとつ。
主人公のカジモドを、その容姿の醜さを理由に群衆の前に晒し上げものを投げつけるシーンは子どもの私に強いトラウマを残したし、いじめの助長につながると捉えられかねないシーンでもある。ディズニーアニメーションが差別をオブラートに包まず、ここまで生々しく描いたのはおそらくこれが最初で最後。だからこそ外見ではなくその中身、優しさによって市民から愛される展開が強調され、観ている我々に衒いなくストレートに訴えかけることができる。
フロロー判事というキャラクターも、悪役という点で見ると素晴らしい。言ってしまえば彼はただの人間であり、魔法を使うでもなく最強の武器を使うでもない、ただその冷酷さと残忍性で強烈なインパクトを残す。ディズニー史上最恐の悪役は彼で間違いない。
命や差別といった重たいテーマを孕んでいるが、随所に見られるコメディのセンスはピカイチだし、ディズニーをあまり好まない方にも心から観てほしいと思える作品。
名作の条件の一つは、良い意味でトラウマを残すことだと思っている。幼い頃に観てから、今でもずっと好きでいられる映画に出会えてよかった。
