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ヒートのJのレビュー・感想・評価

ヒート(1995年製作の映画)
4.5
かの有名な銃撃シーンが印象的な本作。
ロサンゼルスの道路が封鎖され、一瞬にして戦場へと変わる姿は圧巻だ。

何故だろう、今まで大通りで銃撃戦なんて勿論やったことないんだけど、ものすごく「分かるわぁ」って感覚になるくらい臨場感と親近感(言葉が正しいかは分からない)のある銃撃戦だった。

特に、クリスとニールが警察の銃撃に対して車の陰に身を隠しながら前進していく姿や、遠くからものすごい剣幕で銃をぶっ放しながら走ってくるヴィンセントの姿は、その場の緊張がダイレクトに伝わった。

ただ個人的にこの映画で好きなのが、彼らが"ふとした瞬間"に見せる幸せの表情。

たとえばニールがイーディと国外逃亡のために空港へと車を走らせるシーン。
最後まで気を抜くまいと顔を強張らせるものの、一瞬思わず顔を綻ばせてしまうニール。

まだ幸せを手にした訳じゃないのに、その幸せを噛み締めはじめている。
幸せを享受する前にやってくる1番楽しい時間が垣間見えた気がする。

あの一瞬の演技(僕がそう感じだけかもしれないが)はデニーロの俳優としての凄さが窺えた。

そしてもう一つがヴィンセントの義娘が助かった場面。
本来であれば家族との時間を優先するべきだが、タイミング悪く事件の連絡が入る。やはり俺は仕事人間だ、と言うヴィンセントに対して「行ってきて。そして無事だと連絡して」と妻が一言。
仕事含めて自分を受け入れてくれたと思ったヴィンセントの階段を駆け降りるスピードは尋常じゃなく、めちゃくちゃ喜んでいたと思われる。
プライベートの問題が解決すると、異様にハイテンションで仕事に取り組める気持ちがめちゃくちゃ共感できた。


どうしても銃撃戦がピックアップされがちだが、こういった繊細な人物描写もぜひ注目してほしい。

もちろん銃撃戦もお見事で、つまりは柔と剛のバランスが非常に上手い作品だと感じた。


あと一つだけ言いたいのは、どうしてヴィンセントはあんなにも走るのが遅いのか。
ロサンゼルスの銃撃戦しかり、空港前ホテルでイーディが乗っている車を見つけたときしかり、どうして物凄い剣幕で走っているのに、あんなに遅いのか。どうして。
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