よしまる

クリープショーのよしまるのレビュー・感想・評価

クリープショー(1982年製作の映画)
4.3
 疲れた頭には脳天気ホラー。ちょっとだけドキドキする、がっつりビビらなくてよい、このさじ加減がサイコー。

 キング×ロメロが、規制により失われつつあるホラーコミックへのオマージュを捧げようと企画したオムニバス映画。
 2つの才能がどんな化学反応を起こすか楽しみなところであるけれど、このあと洋邦問わず幾つも作られたホラー短編集の追随を許さない圧倒的な面白さを確立している。

 キングの息子で、現在も小説家として活躍しているビリーヒルが主人公の男の子。
ホラーコミックを親に取り上げられてしまうシーンから、見事なアニメパートへのスライド、そこから漫画クリープショーの中の短編という形で5つの物語が紡がれる。

 それぞれに出てくる役者が曲者揃いで、エドハリス、レスリーニールセン、ハルホルブルック、エイドリアンバーボーなどケレン味のある演技を堪能できる。もっとも、学生の頃に観た時はレスリーニールセンくらいしか分からなかったけれどw

 第2話で宇宙から飛来した隕石で一儲けしようとしてワイアール星人もしくはケロニアになってしまう男を、スティーブンキング本人が演じていたのは知らなかった!

 第5話は、先日レビューしたウッディアレン「インテリア」のEGマーシャルが、潔癖症なのにゴキブリに襲われて大変なことになる役を熱演w
 おそらく一度観たら一生忘れられないインパクトの🪳集団。当時はCGなんかございませんので、一匹50セントで25万匹用意して単純計算で12万5千ドル、つまり数百万円かけているらしいww
 人間から這い出てくる奴こそフィギュアを使っているはずだけれど、それにしてもあれだけの🪳に包まれるなんて役者冥利に尽きる(違)。

 個人的に好きなのは第3話。眠っているうちに砂に埋められて海岸に置き去りにされるという、どう考えても恐怖しかないのに、波が押し寄せる度にゲラゲラと笑ってしまったボクはクズ野郎に他ならない。
 いや、ホラーってそういうもんだよね?

 ただ馬鹿馬鹿しさを狙ったコメディだと、こんなには笑えない。人間の業に対するしっぺ返しだとか、社会風刺だとか、そうしたものをきっちり含ませてくるから面白い。先日お亡くなりになった藤子不二雄A氏(ご冥福をお祈りします)の短編集なんかもそう。読み捨てられるコミックにこそその真髄がある。

 例えばさっきボクが笑ったみたいに、人の不幸を見て笑ってしまうことで感ずる自分の中のおぞましさ、観ながらもそれにふと気づいて戦慄する怖さこそがキングとロメロの狙いどころではないだろうか。

 このクリープショー、近年にドラマシリーズでリメイクされたので気になっていながら、自分のサブスクには来なくてなかなか観る機会がない。
 最近のホラーは怖がらせることに神経を注ぎがちに見えるので、こうした精神が失われていなければ良いのだけれど。