安堵霊タラコフスキー

オリーブの林をぬけての安堵霊タラコフスキーのレビュー・感想・評価

オリーブの林をぬけて(1994年製作の映画)
5.0
相変わらずフィクションとドキュメンタリーの混ざり具合が凄い、三部作の最終作。

最初にフィクションと明示されているにもかかわらず本当のインタビューと思えるシーンがチラホラあり、そんなインタビューシーンがフィクション的シーンと絶妙に混ざり合っているから、フィクションとドキュメンタリーの境界が曖昧になっているようでキアロスタミの演出力に感嘆せざるを得ない。

しかも友だちの家はどこ?の主役が脇役として出ていたりそして人生はつづくの1シーンと思しきシーンを撮影中の場面が見られたり、シリーズを通して考えると中々複雑な構造になっているのも実に面白いし、撮影中のトラブルや監督の指示出しが実際の出来事を再現したものかと思うとまた興味深い。

映像それ自体についても、清水宏的な車視点のカットや遠方から撮る自然主義的カットの数々は相変わらず素晴らしく、特にラストの雄大さは筆舌に尽くし難いもので、シリーズの締めくくりに相応しい極上の映像体験が出来る代物となっていた。

しかしこんなキアロスタミの映像哲学が詰め込まれたような傑作を、トリコロール赤の愛やエドワード・ヤンの恋愛時代同様どの賞も与えず無視したイーストウッドらカンヌの審査員の気が知れないし、マジで活きると王妃マルゴに二つ賞与えるくらいならもっとこの作品とかに賞を与えろと20年以上経っても未だに怒りが募る。