ENDO

信子のENDOのレビュー・感想・評価

信子(1940年製作の映画)
4.2
 ハイキングで訪れる川の水面の乱反射に直接口付けして水を飲むクローズアップに萌える。芸妓が女学校の門という境界線で戸惑いながら柵越しに映るあの緊張感溢れる会話。戸惑いながらも侵入して校庭の遊具で戯れる芸妓を凝視する女学校の教師と生徒。その視線に観客は気まずい思いをするだろう。自信家で口が減らないが陰を帯びた見習いのチャー子が可愛い。

 三浦光子は常にカメラから先行して動線がわからない(ハイキングでは岩の上で、自殺騒動では理科室で、寄宿舎での悪戯のあとはベッドで待つ)ので必然的に探す羽目になり、高峰三枝子は常に動き回ることになる。川と寄宿舎で2度にわたる大捜索が描かれるが生徒たちの声が響き渡り伝播していく中で匿名性を帯び不在感は強まる。まるで幽霊のような三浦光子。そして捜索中、拡声のために口に添えられた手。幾重にも重ねられた女学生たちが発する声の震えは不穏。
 
 職員室の奥行きを使った手前から奥に並んだ机と教員たちの前後移動。ドリー撮影と相まって限定された空間ながら飽きさせない。しかし職員室も教室も保身と阻害に満ちており学校のルールと真摯な愛情が併存できず相剋してしまうから泣く。画面の豊かさに比べて利害関係の閉塞感。ミラクル金持ちである善人が神の手を差し伸べるからハッピーエンドは訪れるのだけれど。それは自発的ではなく与えられたものなのでした。
ENDO

ENDO