Azuという名のブシェミ夫人

読書する女のAzuという名のブシェミ夫人のレビュー・感想・評価

読書する女(1988年製作の映画)
3.8
男がベッドで本を読む。
女がベッドに入り込む。
男は目が疲れたので、本を朗読してほしいと言う。
女は朗読を始める・・・本の題名は『読書する女』だ。

読まれる本『読書する女』・・・マリーは読書好きで、自分の美声を活かした仕事が出来ないかと考えていたところ、友人のアドバイスで読み聞かせをすることに。
早速広告会社へ赴き募集をかけると、読み聞かせを依頼する客から次々と手紙が来るようになる。
足の不自由な少年、100歳を超えた未亡人、裕福だがバツイチで欲求不満な社長、ママが多忙な6歳の女の子(オカッパ可愛い!)などなど・・・マリーは客の家庭を訪ね、本の読み聞かせをするのだが、それぞれの事情に飲み込まれていく。

読み聞かせ(朗読)を生業とすることに決めた読書好きの女性を描いた物語『読書する女』・・・をベッドで読み聞かせる女を描いた映画『読書する女』・・・を読書好きの女である私が観てみました。
途中で何を言ってるんだか分からなくなる、このマトリョーシカのような不思議感覚。
TSUTAYA復刻シネマライブラリーどうもありがとう♡
お陰で好きなテイストの作品に出会えました。
あまり起伏の無い、どっちかっていうと眠たくなってきそうな・・・でも寝ない絶妙ライン。←
好き嫌いはハッキリ分かれそう。
爆笑とかでは決してないけど、含み笑いをしてしまうような一風変わったコメディ?・・・なのかな?
笑っていいのよね??

大胆な色使いやパターン、インテリアがとてもオシャレで可愛らしく、また左右対称(もしくはそれをワザと崩した)を意識した構図も目を楽しませてくれる。
(ウェス・アンダーソンが好きそうな感じ!)
読み聞かせる客ごとにイメージカラーのようなものがあるのも、場面の切り替わりとしてメリハリがついていて良かった。
特に少年の緑の部屋がお気に入り♡
ただ可愛いだけじゃなく、そこかしこにさり気なく官能的な雰囲気を匂わせたかと思えば、急にダイレクトに性描写があったりするのはフランス映画らしい。
スカートとニーハイの間の絶対領域から目が離せない少年・・・うん、まぁ分かるよ。笑

題材が読み聞かせなので、ひたすらにミュウミュウが喋っているのだが、フランス語の音の響きが大好きな私には、耳がとても心地よく幸せでした。

ベッドで読み聞かせをしている女性コンスタンスと、彼女が読んでいる物語の主人公マリーを一人二役でミュウミュウが演じていることで、段々観ている私も物語と現実の境界線が見えなくなってくる。
作中非常に印象的に鏡が使われるのですが、この映画自体がまるで合わせ鏡をして覗きこんだ時のように、どこまでもどこまでも奥へ世界が連なっているのです。
そして振り向いた時、もしかしたら自分自身の後ろにも連なりが幾つもあって、私はその物語の一部なのかもしれない。
誰かが私の物語を読んでいるんだとしたら・・・?
そういう得体の知れない事を想像してゾクゾクする感じ、小さい頃から好きだわ。