フランス国旗を構成する三つの色をモチーフにしたトリコロール3部作でキェシロフスキーの遺作。
それぞれの物語が色のテーマに因んで個別に展開されるオムニバス形式だが、3作は同じ世界線・時間軸で繋がっていて時折重複しつつラストに向かって収束していく。
(例えば老人が同じ瓶をゴミ収集所に捨てるシーンが3作全てにあり、それに対する主人公の反応がそれぞれのテーマに直結していたりもする)
1作目:青(自由)
自動車事故により最愛の夫と娘を失った女の重層的な感情、即ち過去の愛からの解放と享受がブルーの世界に象徴されていく。
叙情誘う青の光は過去の愛の忘却、喪失と孤独を象徴している一方で、彼女が持つどこか厭世的な無関心や、故に癒しに飢えてしまった夫の補完的行動を想像させる。
緻密な色彩設計でコントロールされる心情とシンフォニックな協奏曲が相乗したジュリエット・ビノシュの美しさに酔いしれる1作目。