ろく

トリコロール/青の愛のろくのレビュー・感想・評価

トリコロール/青の愛(1993年製作の映画)
3.8
あなたの愛は何色ですか。

ということで青の愛。封切り直後に見に行ったのでまだ若いころ、キエシロフスキ(相変わらず舌を噛みそうな名前だ)を観た。U-NEXTに入っていたので久々に視聴。

見に行ったときはちょうど映画スノビズム真っ盛りでキエシロフスキは観なければいけないとばかりに「二人のベロニカ」「デカローグ」「愛に関する短いフィルム」など観たけど今思えばキエシロフスキ観ているおれかっけーーってレベルでしか観てなかったんだよなぁとしみじみ反省。だからと言って今ちゃんと見ているとも思えないけど。

で今回。青はそのまま「自由」を意味するそうだけど、僕はこの作品に「寛容(tolerance)」を感じた。これこそこの映画のキーじゃないかって。

そもそも僕らはそんなに相手を許すことが出来るだろうか。許しても愛することが出来るだろうか。これが非常に難しい。許すという行為がえてして「もうお前に興味ない」というベクトルで愛は「お前だけだ」というベクトル。自然それは相反する。だけどこの相反することをともに行うことこそがこの作品の愛なんじゃねえのって。それはヘーゲルが言うテーゼとアンチテーゼからジンテーゼにいくようなものなのかもしれないよね。

夫の子供を産んでくれと浮気相手に言ってしまうジュリエット・ビノシュは確実にいままでのタームから変わっている。最初悲しみ、そして怒り、最後には許す。それがこの映画なのかもしれない。そしてその経過をとることこそがキエシロフスキの目的かもと。

だとしたら「青」ってなんだろう。ひょっとして青は「一度冷静になる」ってことかもよ。いろんなことがあるんじゃねえ、それを全部ひっくるめて請け負う。冷静にね。それは最初に書いた「寛容」とつながってくるんじゃないかな。

ジュリエット・ビノシュ、昔は大好きな女優でした。僕にとってジュリエット・ルイスとジュリエット・ビノシュの二大ジュリエットがそのころのファム・ファタール。まあ今はすっかりお年を召したけど。

あ、結構褒めたけど、大げさな演出はちょっと苦笑。あそこまで大げさにしてたいしたこと起きない(これは「二人のベロニカ」でもそう)。カメラワークなんかもそんなにうまくない(でもキエシロフスキだったら許してしまう不思議)。下手でも撮りたいものがあるならそれは自然と引き込まれるってことなんじゃないの。
ろく

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