キェシロフスキ晩年のシリーズトリコロール三部作の中で最も芸術的で評価の高い作品。
不気味にかつ美しく各所でまとわりつく青の強調された映像とテレンス・マリックみたいな叙情的な表現(というかおそらくこっちの方が21世紀のマリックに影響与えてる)は、さながら殺人に関する短いフィルムとふたりのヴェロニカを足したような作品となっていて、自分としてもこの作品がキェシロフスキの最高傑作だと考える。
それにしてもこの映画における映像、光の具合は見る度惚れ惚れするのだけど、どうすればここまで神秘的な光に仕上げられるのか不思議でならない。
どちらかといえば対話がメインの作品が多かったキェシロフスキだが、やはり彼はこういう表現に重きを置いた作品の方が断然良い。
しかし以前は人間が会話する場面ばかり撮っていたキェシロフスキが、この作品みたいな映像と音による深遠な表現で構成された映画を撮るようになるとは、人間どうなるかわからないものだ。