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別れの朝のCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

別れの朝(1970年製作の映画)
3.6
【爆走するメロドラマ】
先日映画友の会で、映画仲間からホセ・ルイス・ゲリンの「工事中」DVDと引き替えにレアな作品を譲り受けた。その名も「別れの朝」。監督はジャン=ガブリエル・アルビコッコ、主演はカトリーヌ・ジュールダンとよっぽどのシネフィルじゃないとピンとこない組み合わせ。しかし「男と女」のフランシス・レイの音楽をバックに、テレンス・マリック映画を思わせる幻想的な映像を予告編で観た時、ブンブンの心は揺さぶられた。Amazonだと8000円ぐらいするプレミア作品を入手でき、ウキウキで観ました♪

☆「別れの朝」あらすじ
クリスティーヌ・ド・リボワール原作。
第二次世界大戦中のフランスを舞台に、斜陽貴族のフランス娘と侵略してきたドイツ軍士官による禁断の愛が紡がれていく...

☆爆走恋愛劇!
てっきり、ゆったりとしたメロドラマ、それこそチェーホフの「桜の園」を匂わせる作品かなと思っていました。しかし、本作はテレンス・マリックびっくり美しすぎる映像とは裏腹に爆速でフランス貴族は凋落し、愛は台風のように過ぎ去っていく。息のつく間のない、貴族・軍人の会話、そして草食系男子が繁栄する現代日本では考えられないくらい秒で激しくボディタッチ、愛撫を交わす描写に衝撃を受けた。すげぇ!

昨年話題となった「この世界の片隅に」でも、空間的時間の流れはゆったりしているのに、物語は爆走しているという二律背反を見事なバランス感覚で両立させていたが、この「別れの朝」も同様にバランスが取れていました。

☆圧倒的映像美
「客席に映像が襲いかかる」
3D映画以外で、このような表現を使える作品はそう多くない。本作は、数少ない「客席に映像が襲いかかる」映画です。常時逆光、放射線状に光が飛び込んでくる。構図やカメラワークが完璧なほど「美」であり、この映像に胸を奪われぬものはいないだろう。

本作が作られたのは1971年。当時逆光は映画術として禁じ手だったはず。テレンス・マリックやカルロス・レイガダスなど、数十年先のアート映画を意識した先見の明に驚かされました。もはやストーリーなんてなくなっては来るんだけれども、観られて本当に良かった。上半期、熱かった映画の一本となりました。
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