滝和也

蘇える金狼の滝和也のレビュー・感想・評価

蘇える金狼(1979年製作の映画)
4.0
動く標的狙いを
着けて〜♪
燃え上がる真昼の
静けさは〜♪
根倉を無くした
ケダモノの涙〜♪

松田優作主演「蘇る金狼」のテーマ。ブルージーな泣きのギターが印象的なテーマにのり、優作が躍動するハードボイルド作品であり、ピカレスクロマンです。このテーマ無茶苦茶かっこいい(^^)

松田優作と言えば、狂気。今作での終盤にその狂気の片鱗を見せ始めます。それは後年、野獣死すべしで昇華。ブラックレインで世界に認められます。

高度成長期である、70年代終盤、腐敗した都会に生きる獣を描いた作品です。原作は日本ハードボイルド界の巨匠大藪春彦。監督は遊戯シリーズから優作と組む村川透。まさに黄金のトリオです(^^) 松田優作の渋み、格好良さ、そしてユーモア、ここ迄の映画・TV作品を結集した作品と言っても過言ではありません。

上場企業、東和油脂に務める朝倉(優作)。昼は真面目な社員だが、彼には裏の顔が存在する。銃器に強く、ボクシングでもチャンプを狙える、その男は、現金輸送を狙い一億を強奪。その紙幣ナンバーが控えられることを知るや、麻薬組織を脅しヘロインをその金で得ていく。そして上司の情婦(風吹ジュン様)を籠絡し…。

しなやかな長い四肢を駆使したアクションと繊細かつ剛胆な表情。松田優作ファンならずとも、その姿に憧れをもつはず。今作は普段は長髪の上に七三分けのカツラをかぶり、ダサいスーツの男が、実は縦横無尽に悪を翻弄する悪であると言うお話自体もはや、ヒーローコミックに近い。しかも私腹を肥やす上司や重役に人泡蒸すのは、サラリーマンなら一度ならずとも考えるはず。

出演者の演技も素晴らしい。この作品で女優として大輪の花を咲かせたのはヒロイン風吹ジュン。朝倉に利用され、ヤク付にされる役だが、可愛い、エロい。あの甘えたような声と可愛い顔とそして大胆な艶技。あるスキャンダルから復活するための映画だったが、正に蘇り、現在も活躍する礎となった作品となる。また情なき男に情をもたせた、その時…。

敵役の中には、成田三樹夫さんがいる。やはり上手い。強面ながらおべっかを使い、時にはオネエ言葉まで。役者の幅を見せてくる(^^)探偵物語での刑事役も忘れられないが。

男をみたければ、是非!ある意味男の夢や浪漫が散りばめられた悪のヒーロー、松田優作に刮目せよ!
滝和也

滝和也