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蘇える金狼のtjZeroのレビュー・感想・評価

蘇える金狼(1979年製作の映画)
3.3
昼間は平凡なサラリーマン。夜は大胆不敵な犯罪者…無鉄砲な若者の刹那的な生きざまを描く…。

ハードボイルド・エッグといえば、堅ゆで卵のことだけど、このハードボイルド映画の主人公・朝倉には黄身というか、心が無いみたい。

正義感も、復讐心も、愛情のカケラも無い。
虚無の表情のまま、淡々と凶行をくり返す。

お話の方も行き当たりばったりというか、破綻しまくりの出たとこ勝負。
たしかな満足感とは程遠い。

無いない尽くしのようだけど、たしかに”ある”のが主演の松田優作の魅力。圧倒的な存在感と、そのたたずまい。

警官でもヤクザでも見境なく殺し、愛した女さえもヤク漬けにして情報を引き出す、しかも納得できるような動機も無い…こんな主人公、普通だったらまったく感情移入できないし、観ていたくもないはずなんだけど、なぜか眼を離せない。
松田優作が血肉を与えたこのキャラクターに嫌悪を覚えつつも、強烈に引きつけられてしまう。

カッコいい、という安易な言葉では収めたくない猥雑な魅力。
”ゲスの極み”みたいな主人公を、アンチではあるが立派にヒーローとして成立させた、主演俳優のチカラに屈服させられてしまった。
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