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最後の戦いのCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

最後の戦い(1983年製作の映画)
4.5
【忘れてない?リュック・ベッソンのこの傑作を】
『死ぬまでに観たい映画1001本』は10年以上読みこんでいても毎回新しい発見がある。最近まで『ギャング・オブ・ニューヨーク』が掲載されているものだと思っていたら、それはアベル・フェラーラの『キング・オブ・ニューヨーク』だった。同様のケースとして、てっきり『レオン』は掲載されているものだと思っていたら、リュック・ベッソン作品はデビュー作の『最後の戦い』だけだった。さて、皆さんはご存知だろうか?このリュック・ベッソンが弱冠24歳で制作したデビュー作を。

通常リュック・ベッソンといえば『レオン』論争や、昨今の胸焼けするような大作酷評の肴として召還される監督である。無論、彼は映画監督というよりかは『TAXi』、『トランスポーター』、『96時間』といったフランチャイズ映画を育てていく経営者としてのイメージが強い。現にヨーロッパ・コープの社長だしね。

ただ、そんな彼の原石を見ると、彼の荒ぶった才能をまた観てみたいと思った。


デビュー作にして、白黒サイレント世紀末映画をやろうとは中々ぶっ飛んでいっます。

文明が破壊され、荒野の中で『マッドマックス』ばりの生活を強いられている人類。男は本能あるがままにビニールの人形と合体して欲をみたしていた。そんな世界では、常に弱肉強食の世界であり、追う/追われるの抗争が日常茶飯事となっている。リュック・ベッソンはサイレント時代の冒険活劇のように目まぐるしいカット割りで、言葉なくとも惹きこまれてしまうシュールなドラマを創りあげた。

チンピラに追われる男。男はガラスを破壊する。白黒なので、男がガラスを割る瞬間だけ、物質としての《ガラス》が浮き上がる異様なカッコ良さが画面を支配する中、壊されていく扉と、逃れようと慌てふためく男のカットがスタイリッシュに交差していく。この時点で、大衆娯楽映画の肝を鷲掴みにしている。

映画は、男と男の肉体的戦いを姿形変えて描写していく。防護服をきた男が、謎の棒を持って無機質に男に襲いかかる。それを生々しく交わしていき、マンホールへと逃げる場面やバールのようなものを持った男とエクスカリバーのようなものを持った男がトランスミュージックの中で追いかけっこする場面の荒唐無稽さ。

内容自体は正直よくわからないし、空から魚を降らせてみたりとセンスオブワンダーに頼りきりなところこそあれども、確かにこれは『死ぬまでに観たい映画1001本』に掲載されるべくしてその座を譲らない唯一無二の傑作でありました。
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