【武器か猫缶か】
ニール・ブロンカンプ監督のSFモキュメンタリー風作品。
〈あらすじ〉
エイリアンを難民として受け入れてから20数年後のヨハネスブルグ。共同居住区「第9地区」はスラムと化し、地域住民の不満は爆発寸前にまで高まっていた。そこで超国家機関MNUは、エイリアンたちを新たな難民キャンプへ強制移住させることを決定。プロジェクトの責任者にヴィカスを抜擢する。ヴィカスはさっそく彼らの住居を訪問して立ち退きの通達をして廻るが、思わぬ事態に遭遇する…。
〈所感〉
なんでよりにもよってヨハネスブルグが舞台??と思ったらニール・ブロンカンプ監督の出身地ということね!
この作品に登場するエイリアン、通称エビが物凄い造形。エビというより見た目はゴキブリ?多少出オチ感もあるが。エビ達の住む第9地区から立ち退きを迫るヴィカスは、謎の物体に触れて自業自得でエビと同じ身体になってしまう。カフカ『変身』的というかクローネンバーグ『ザ・フライ』的な展開にそうくるか!と良い意味で期待を裏切られた。前半はドキュメンタリー調にインタビューで彼らの情報が伝えられる。そんな調子でこのエイリアン結構やべぇ!とか賢い!とか強い!と姿も思考も斬新な彼らにすごく興味が惹かれたが、後半はやや失速気味か。空腹で喉から手が出るほど猫缶を欲するヴィカスに笑った。そりゃ吐くよな。とにかく設定や世界観が面白く、単なるエイリアンVS地球人ではの構図ではなく、同じ地球人同士でもエイリアンの是非を巡り、武器や科学など彼らから盗めるものはとことん盗もう!いや、危険なので近づかないようにしよう!なるべく人々の危険を排除するため無条件に居住区を移設してしまおう!いや、エイリアンにも人権はあるので排他的に接してはいけない!など人類の声に対立が見られるのが一枚岩ではない人類という層の違いが見られて良かった。最後まで見てると、思わず彼らに感情移入してしまい、人間の方がよっぽど愚かに思えてしまう所が面白い。ブロンカンプ監督や制作に関わったピーター・ジャクソンらの思想も随所に窺うことができて、単なるB級映画ではないと感じた。