のり助

第9地区ののり助のレビュー・感想・評価

第9地区(2009年製作の映画)
5.0
劇場でデトロイトをみた次の日に、またすごいのをみちゃったなあ。
アパルトヘイトをエイリアンでやったSF映画。
この二日でみたこの二本の共通点として、やっぱり、差別や暴力による弾圧っていうのは、恐怖や疑心暗鬼から生まれるんだなと。
これがまたエンターテイメントとしても完璧なのがすっごい。
アクション的にもSF的にもたいそう面白い。

この作品にでてくるエイリアンはものすごく人間と姿形がかけ離れていて、最初は本当に化け物にしか見えない。
みてる側としても明らかに怖いし、「こんなんいきなりきたらそりゃ隔離するわ」と思って当然な見た目。

だけど話が進むにつれて、主人公の身に起こる事を通じて、
エイリアンの表情が見えてきて、感情がみえてきて、
エイリアンだってただ必至に生きてるだけだし、恐怖してることがわかって、感情移入していくようになってる。
エイリアンの表情が豊かで、すごい。化け物にしか見えないのに、私たちがよく知っているのとまったく同じ感情を持ってるんだっていうのがすごく伝わる動きをする。

とはいえやっぱりエイリアンなんて怖いし、自分があの世界に存在していたとして、あの現場に居合わせでもしないかぎり、いやしたとしても、じゃあ一緒に暮らしましょうとはとうていなれそうにもない。

人間同士で差別するのも構造的には同じで、別人種のことを危ない奴らだと疑って、怖がるから遠ざけようとするし少し緊張しただけで暴力を持ち出すんだなあと思う。

ポリコレ主義の人は差別主義者の事を悪魔だと思っている節があるけれど、この映画はこのテーマを直接人間でやるのではなく、エイリアンでやることで、そういう人にも差別主義者の感情を追体験させてくれる。
実際はそんなことないのに、危ないし怖いしわかり合える筈がない、何するかわからないとか思ってることが問題なんだよなあ。

そこで、現実に戻る。
実際に起こってることは人間同士なんだから、この映画みたいにエイリアンが突然来るよりはわかり合える筈なんじゃないかなあ。
エイリアンならまだしも、たかだか肌の色の違いくらいでなあ。
のり助

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