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第9地区のKのレビュー・感想・評価

第9地区(2009年製作の映画)
3.7
ヨハネスブルグの上空に巨大な宇宙船が現れ、中にはエイリアンが発見される。人間は宇宙船の真下に「第9地区」を作り、そこにエイリアンたちを居住させたが、そこはたちまちスラム化し、彼らは「エビ」という蔑名で呼ばれ、犯罪や、住民とのいさかいが絶えなくなった。

彼らを厄介払いするかのように、(人間にとって)”より良い”環境である第10地区に移転しようとする計画の中、問題が発生する。

言わずもがな、この映画では「エイリアン=黒人」であり、設定には南アのアパルトヘイトの状況がふんだんに盛り込まれている。

主人公は横柄で、上に弱くて下に強く、権力好きのくそやろう。そしてこの映画に出てくる人間すべてがくそやろうと言っても過言ではない。

逆に最も”人間的な”感情を持つのがエイリアンのクリストファーであり、彼は一貫して知的で誇り高く、権力にも暴力にも屈しない。

欧米列強の国々が南アフリカを乗っ取ろうとした時、彼らには原住民の黒人が宇宙人にでも見えたのでしょう。見た目は自分たちと異質な彼ら、でも中身を見てみると、いたって温厚でむしろ人間らしい。

よくわからない存在を追いやり、自分たちの利益(金)しか考えてこなかった南アの歴史を垣間見ることができます。

別のレビューでも書いていますが、南アは未だ植民地の面影を強く残していて、貧富の差も激しい。富はごくわずかな白人層が搾取し、その他を人口で言えばマジョリティの黒人たちが分け合う。

この映画の宇宙人にしていたことを、同じ人間である黒人にしていた。人間は愚かでとても醜い。そんなことを描き出すSF映画。
K

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