まっどまっくすこーじ

第9地区のまっどまっくすこーじのレビュー・感想・評価

第9地区(2009年製作の映画)
4.8
ニール・ブロムカンプ監督デビュー作。
デビューにしてこのレベル… 南アにこのような天才がいたとは…

なんてちょっとオーバーでしたけど、でも本当に本作を最初観たときはビックリしました。

今回、ブロムカンプ監督三作目となるチャッピーを観る前にもう一度本作を観直そうと思って借りてきたはいいけど、ディスクに傷があったらしく再生出来なくて、でも時間なくて仕方なく先にチャッピー観て、それから本作をTSUTAYAで違うディスクに取り替えてやっと観ました。

冒頭はインタビューカメラ視点とニュースカメラにPOVと少しせわしない感じ。だけどその中で状況説明がなされていて、テンポはとてもよいことに気付かされる。
そのあと落ち着いてきたかな、というタイミングで話が展開を始める。

主人公は半分役人のような職業で、エリートコースにも乗っている。
なのでエビ達(エイリアン)への蔑視も激しい。
その主人公があることが原因で、どんどんエビに変身していく羽目におちいり 、今度は自分が虐げられる状況に。

追われ続けて、エビ達の居住区である第9地区に隠れ、徐々に変身してゆく恐怖に怯える主人公だが、他のエビ達とは違うインテリのエビの親子に協力することで、体が元に戻れるというモチベーションを得た途端、エビと一緒に前向きに頑張っちゃいます。

やはり南アフリカということもあり、様々な差別問題がテーマになっています。
ラストは書きませんが、これがベストだと私は思っています。

それで今作の私的魅力といたしましては、まずCGやVFXの完成度。ただ作り込むのではなく、ほんの少しざらつかせることで自然さを醸し出す感じ。
現代はデジタル撮影ですのでお若い方にはイメージしずらいかも知れませんが、以前のフィルム撮影で言うと粒子をわざと少し荒くさせて撮る感じです。
ブロムカンプさん作品で言うと次作のエリジウムでは割りとピンの合ったCGの作り込みだったように記憶してます。
最新作のチャッピーは今作と次作のあいだくらい、つまり良いとこどりにバランスを取っているように思いました。
話を戻しまして、今作では様々なエイリアン用の武器が出てきます。所謂SFガジェットですね、それが威力を発揮するともう大変。スプラッタムービーと化します。前半でも人間やエビが殺されるシーンは少しグロ傾向がありますが、クライマックス前後は結構グロいと思われます。ただ、すこーし笑えるグロさに味付けしてあるのでそんなにアレルギーにはならないとは思います。
そして極めつけがエビ用パワードスーツ!! 本来エビ用なのを主人公が装着するのですが、フィジカル的に情けない主人公が超強力マシーンになっちゃう王道的カタルシス!
そのエビ用という設定ならではのデザインがかっこいいぞ!トドメのミサイルだ! ヒュルヒュルどどーん!
って、何のこっちゃ済みませんm(__)m

というわけで(?)人間のダークな部分を想起させ、さらに地球という星の上の極小さなスラムに縛りつけられたエビ型エイリアンの悲哀を人種間・格差間差別のメタファーとして描いた今作は、必ずやSFムービーの金字塔として後世に語り継がれていくだろう… なーんてことになるかどうか判りませんが私は大好きな映画です!!

それで、冒頭の入りとか人間ではないものにテーマを託すのとかいろいろ今作の手法をチャッピーでも踏襲してますが、これはブロムカンプさんの個性(?)として私は前向きに捉えております。 決してアイデア枯渇由来自己パロディシンドロームではないことを願って止みません。なーんて、まだチャッピーで3作目ですからね。これからのブロムカンプさんに超期待してます。
ちなみにチャッピーのレビューのほうも覗いてみて頂けたら幸いです(^_^)

今作のエビ用パワードスーツとチャッピーに出てくるムースという遠隔操縦重犯罪制圧マシーンがバトルするスピンオフを作ってくれないかなぁ、と強く希望します(^_^ゞ

最後にもうひとつ。
海老料理を食べる予定のある方はこの映画を観るのはしばらくしてからにすることをお勧めします(^w^)