konoesakuta

サードのkonoesakutaのレビュー・感想・評価

サード(1978年製作の映画)
3.5
 関東の少年院。収監された少年たちの日常。窃盗、暴行、万引き常習、そして殺人。
 皆あだ名がある。主人公は「サード」と呼ばれる。高校時代野球部でサードを守っていたからだ。

 回想する。俺は野球がうまくも下手くそでもなかった。俺の守るサードを敵チームがどんどん駆け抜けホームを目指す。いざ自分が長打を打つと、ホームを目指して走るのだが、ホームが消えている。仕方なしに再度走るのだがホームはみつからない。

 この辺りがこの作品の肝なのだと。行き場のない青春。走れども走れども目的の場所はみつからない。

 自分の好きな女が体を売るのに自分は何もできない。インチキポン引き状態。そして殺人。

 永島敏行の駆り立てられるような青さの光る演技と、森下愛子の可憐さと展望の無さが混ざった演技の融合は一見の価値あり。ノワールムービーやアメリカンニューシネマと比べると、ひょっとすると明るさすら感じる映像だ。でも内包するテーマは重く熱く素手で持つことはできない。

 主人公「サード」は走ることしかできないのだ。