菩薩

放浪の画家 ピロスマニの菩薩のレビュー・感想・評価

放浪の画家 ピロスマニ(1969年製作の映画)
4.2
孤高の天才にして放浪の画家ピロスマニ、そして誰よりも孤独な男ピロスマニ。世間との足並みを揃えることが容易ではない彼にとっては、絵を描くという行為が唯一の反抗であり、かつ当然生活を成り立たせる上でも、彼自身の存在を証明し続けていくためにも必要な行為である。恋をしては自らには何もない事に絶望し、その思いをカンバスにぶつけるしかなく、初めて他人に認められては図に乗り、高く持ち上げられた分、地面に叩きつけられ強烈な痛手を追う。手のひらを返した様に態度を一変させる町の住人の前で叫びながら、もはや開き直るしか術を持たない彼の姿はあまりに痛々しく、哀れに見えた。神の前では自らの消極的な死すら受け入れる事を許されず、満身創痍の体を引きずり、馬車で連れられた先で、彼はまた筆を握ることが果たして出来たのだろうか。グルジア(今はジョージアだね)の魂を象徴するかの様な存在に感銘を受けたと同時に、なかなかのダメージを負った。彼がふと漏らした「人生が自分を飲み込んで喉に引っ掛けてしまった。」の一言には心底共感したし、本当にね、そのまま飲み込んで消化してウンコにして流してくれりゃ楽なものを、残酷ですなまったく。
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