ぬーたん

チョコレートのぬーたんのレビュー・感想・評価

チョコレート(2001年製作の映画)
4.4
1月22日、今日はヒース・レジャーの命日😢
生きていれば、4月に40歳を迎えるはずだった。
40歳のヒース、どんな役を演じていただろう?
短い役者人生で出演作は少ないし、私も熱狂的なファンでなく実は数本しか観てないから、ヒースのことを鼻息荒く語るなんて恥ずかしいことは出来ないわ。でも好きだった。
『ブロークバック・マウンテン』『ダークナイト』そして今作がヒースのベスト3、かなぁと思っている。
『チョコレート』というタイトル、何だか美味しそうでチョコレートが沢山出て来るのかな?なんて思っていたけど、実は違った。
チョコレートアイスが肝心なシーンで出て来るが、それとは別にチョコレートの色が黒人を表している、という解説を観た、なるほど!
主演のハル・ベリーはアフリカ系アメリカ人として初めて今作でアカデミー賞主演女優賞を受賞したし、そういう深い意味が隠れていたのね~と感心したの。
ところが、今作の原題は『Monster's Ball』
この意味は、死刑執行の前夜に刑務官たちが開くパーティー、のことだそうで。
そういえば、そんなシーンがあったわ。
つまり、チョコレートというタイトルは邦題を付けた日本人が考えたタイトル。だから、あの深い意味は作り手にはなかったわけ。
と、ちょっとがっかり。深読みはハズレ!
刑務官のハンクをビリー・ボブ・ソーントン。
まだ40代で若い。
テレビドラマの『ファーゴ』の殺し屋のイメージが強すぎて、冷酷で無表情な役がピッタリだと思うけど、この頃からやっぱりそうだったのね。
仕事に情は挟まない、というか情がない。
息子にも厳しいし、同僚にも差別的。
父親に言われ、近所の黒人の子供を銃で追い払う。
非情な人間、という設定から入る。
それが後半に変わっていくが、彼が演じたからこそ、リアルになったと思う。
ジェレミー・アイアンズやダニエル・デイ・ルイスではダメだ。
好きだけど!
この息子ソニーをヒースが演じた。
厳しく差別的な父親と祖父と暮らし、同じ刑務官の職に就き、必死に努力をするが…。
父に認められたい気持ちと、心優しい本当の自分との葛藤。
その苦悩する姿が痛々しいほど演技で伝わって来る。
そして、現実のヒースと重なり、泣けてしまう。
美しい顔に澄んだ瞳。
純粋がゆえに割り切れない想い。
ヒースと重なるソニーという人物が心にいつまでも残る。
レティシアをハル・ベリー。
オスカーを獲っただけあり、体を張った迫真の演技。
アフリカ系とはいえ、母は白人のため、どちらの良さも持った美しいハーフだ。
髪型や角度によっては白人に見えたりもする。
今作で子供が全くの黒人の子供だったから、夫の連れ子という設定なのかとも思った。ちょっと不自然だった。
ハンクの父をピーター・ボイル。
さすがの貫禄で憎たらしい差別主義者を好演。
この数年後に亡くなったそうだ。
ストーリーは思いがけない方向へと展開していく。
ハンクの変わりようは最初は唐突のように感じたが、その心中を想いながら観ていくと、息子役のヒースの顔が浮かんだりして、胸が締め付けられる。
人という漢字は2人の人間が寄りかかっている形だ、と聞いたことがあるけど、今作の2人はまさに、寄りかかる、という言葉が合う。
家族を亡くし、生きていく方向すら分からなくなった2人が、寄りかかり合う。
寄り添う、というには、あまりにも深い闇があるから。
偶然で必然の出会いを経て、真実を心にしまって、静かに夜空を見上げる。
そこにはチョコレートアイスが。
監督はマーク・フォースター。
わずか30歳の時の作品とは思えない。
ラストシーンが素晴らしい。
泣けて来た。
ヒース、ありがとう。
ぬーたん

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