一人旅

ミリオンズの一人旅のレビュー・感想・評価

ミリオンズ(2004年製作の映画)
3.0
ダニー・ボイル監督作。

偶然に大金を手にしてしまった兄弟が巻き起こす騒動を描いたコメディ。

イギリス映画界を代表するダニー・ボイル監督による心温まるコメディで、代表作『トレインスポッティング』や『スラムドッグ$ミリオネア』等と比較すると知名度こそ劣りますが、ボイル流のスタイリッシュな演出が散見される佳作に仕上がっています。

線路沿いの秘密基地で過ごしていた少年ダミアンの頭上に大金の詰まったボストンバッグが落ちてきたことを発端として、兄アンソニーと共に大金の使い道に悩む兄弟の姿を、執拗に大金を狙う窃盗団とのトラブルを絡めながら描き出しています。英ポンド→ユーロへの通貨切り替え(実際には実施されていない)や、それに伴い通貨の両替に長蛇の列を作る市民の光景、ユーロへの切り替えをユーモラスに告知する電子広告看板など、2002年にユーロが導入され一大転換期を迎えた欧州社会の浮き足立った世間の雰囲気を表現しています(結局イギリスはユーロ未導入に終わり、2016年にはEUからの脱退が決定しましたが…)。

兄弟と周りの大人たちの姿を通じてお金のプラス面・マイナス面をそれぞれ浮かび上がらせた作劇で、貧しい人々にとってお金は喉から手が出るほど欲しい物ですが、その一方でお金の存在が人々を誘惑しさらには人間関係をギクシャクさせてしまいます。確かに生きる上でお金は大切ですが、必要以上のお金に心を踊らされてはいけないのです。ダミアンは大金に散々振り回された末に、ある決断を下します。一般的感覚の大人からすればそれは浅はかな行動に見えてしまうのですが、お金の価値を知らない子供だからこそ躊躇なくなせる業でもあります。

子供と大人の対比、お金の必要性(善)と魔力(悪)、そして現実と幻想…。親子の愛情とお金本来の役割を再確認する着地に心温まります。
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