海

天然コケッコーの海のレビュー・感想・評価

天然コケッコー(2007年製作の映画)
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映画を観ない生活をふと始めてみて、まだ一週間も経っていないのに、もう二百年くらい流れてしまった気がする。寂しくて昨日の夕方泣きそうになって本当に時々あまりに子供っぽい自分にいやになる。そよちゃんの言った「もうすぐ消えてなくなるんかもしれんと思やあ、ささいなことが急に輝いて見えてきてしまう」という言葉は、もしかするととても映画なのかもしれなくて、続いていく毎日にいつも訪れている終わり、あるいは終わっていく毎日にいつも流れている続き。いつも会えるだれかといつかしなきゃいけないさよなら、あるいはもう会えない誰かとまだ叶えている待ち合わせ。空を飛んで渡れないから、海を泳ぐのと似ているね。雪の降る音や風のない日の海の音の中で育たなきゃ、きっときこえないものの声に、耳をすましていたこの子たちの中に、幼いころのわたしもひとり混ざっているように見えた。冷たいのと温いのがとけあった風が、部屋に入ってくる。取り込んだ洗濯物、いつもベッドの上に放ったままにしてしまうんだけど、映画を観ている間中、猫がわたしの下着を抱き込んで眠っていた。毛まみれになっちゃうよっておでこつついてみたけど全然起きないから、わたしのことが大好きでたまらないんだねって言うと、「ンー」って鳴いた。可笑しいな、本当に。いとしいな、よく見知ったものの全部。わたしももう少しだけ、好きなものを抱き込んだままで眠っていたい。
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