ごろちん

今、僕はのごろちんのネタバレレビュー・内容・結末

今、僕は(2007年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

引きこもり青年のドキュメンタリーは過去に何回か観たことはあるけど、劇映画は初かも。基本的に交際範囲が広くないから派手さはないし、甘美なところもない。そういった意味では映画にし難い設定なのかもしれない。にも関わらずこの作品にはぐいぐいと引き込まれた。それはたぶん主人公の心の機微をしっかりと感じ取れたからだと思う。

散らかった部屋、いつもと同じ服、カットを放置して伸びた髪、自信のない声、母親への八つ当たり。他人からの忠告もただただ疎ましいだけ。ドライな映像から伝わってくるのは二十歳の青年サトルの鬱積した感情と引きこもりという深い闇。その闇から救いの光を安易に見せないのは、サトルの自立を促す監督の厳しさのように感じた。

竹馬監督が影響を受けたというダルデンヌ兄弟の作品とちょっと違うかなと感じたところは、カタルシスの描き方。ダルデンヌ兄弟作品の方は他者とのつながりから生まれてくる浄化。この作品も他者との関わりはあるものの、ほとんどその影響を受けない、寧ろ敢えて突き放しているかのよう。闇に飲まれるか、それとも微かな光を模索して見出すのかは、詰まるところ自分次第、と監督は言いたいのでは。

母親に対するサトルの微かな心の変化にはじんと来ました。こういう映画は本当好みだなー。
KKMX さん、オススメありがとうございました!
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