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「A」のtetsuのレビュー・感想・評価

「A」(1998年製作の映画)
4.0
監督の最新作に向けて鑑賞。

20世紀末、日本社会に衝撃を与えた宗教団体"オウム真理教"
これは地下鉄サリン事件以降、その広報副部長である荒木浩に密着したドキュメンタリーである。

日本において、「宗教」と聞くと無自覚に不安や恐怖感を抱いてしまう人は多いのではないか。
僕は、その元凶に本作で取り上げられる「オウム真理教」の存在があるように考えていたが、本作を観ると、その漠然としたイメージは、かなり変わった。

確かにオウム真理教の起こした事件は恐ろしく、許されるものではない。
しかし、本作を見ると、その中にいた信者たちは、なんら一般の人々と変わらないのではないかと思った。
荒木さんやその他の信者など、あくまで、そこに生きる"人々の姿"に追った視点が斬新で、「映画」というメディアで本作が記録されたこと自体に大きな意義を感じた。

特に印象的だったシーンは、TVの前に集まり、写しだされた自分達の姿を確認する信者たちの姿。
TVというメディアに都合良く切り取られる彼らが落ち込む様子は、当時、オウム真理教を密着することでTV局からの契約を切られたという森達也監督自身のメディア批判とも言える鋭い視線を見事に記録していた。

自分自身、今年の始めに兄がキリスト教に入信したこともあり、宗教に対しては、できる限り中立な立場をとるように心がけていたが、本作を観て、その思いがより強固になった。
(自分自身は何らかの宗教に所属する気は全くないですけどね...。笑)
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