Melko

ニキータのMelkoのレビュー・感想・評価

ニキータ(1990年製作の映画)
4.0
か、かっけえ……そんでもって、切ない……
苦しい……つらい……けどなんだろう、この不思議な余韻は……

まずオープニングでタイトル出てくるところがカッコいい。今まで見た中でもトップクラスのスタイリッシュさ。無駄な音のないBGM。ウェットなギターでおしゃれなパートに、無機質な音の緊張感漂うパートの緩急。

良くも悪くも、思ってたのと違った。
ジャケットから想像するハードボイルドなガンファイトは意外にも控えめ。荒れ狂ってたニキータが、人間としての落ち着きを取り戻し、愛し愛され、そして羽ばたき消えてゆく、幻想のような話だった。

これはたしかに好き嫌いが別れそう。なによりも、この主人公ニキータを、見てる人が好きになれるかどうかでこの話の受け取り方が変わる気がする。
最初は、一向に人の話を聞こうとしないニキータに、観てるこちらも引いてしまったけど、洗練された女性に生まれ変わり、愛する人との生活の狭間で工作員の仕事をこなす姿を見てるうち、段々可憐に可愛く見えてくる。
裁判で終身刑を受けたときは叫び狂い、訓練所では、ナメた態度、呪いみたく部屋の壁中落書きし、まさに内側から壊れていたニキータが、社会に出て一つ目の仕事では、きちんと連絡役に指示を仰いで、落ち着いて行動していて、なんかグッと来た。ハネムーン先では淡々とスナイパーライフルまで組み立てちゃって…変われたね、やればできるね、って(誰目線)

てかニキータってタイトルにするならコードネームがニキータの方が良かったんじゃ…?

やっぱり訓練所卒業前の試験的な仕事は切なかったなあ。ウキウキしながらプレゼント開けたら…、、絶望の表情とはまさにこのことか。この仕事をするしか、生きていくには他に方法がない。やるしかない。絶望と共に自分の運命を受け入れた瞬間。
食事会でボブがニキータの過去について作り話でっち上げて話してたとき、ニキータ最初は嬉しそうだったのに、段々辛そうな顔になってたのは、愛情なのか仕事でやってるのか、彼の気持ちがわからなくなったからかな。
バスルームで泣きながら狙撃するところも悲しい。

やっと出てきたと思ったら、ジャンレノ撃ちすぎ笑 コントみたいだった。笑
暴走するヴィクトルに、「落ち着いて!」ってニキータがいうところは、ボブから教え込まれたことが生きてる、てちょっと感動した。

きっと、ニキータにとっては、ボブはキュンキュンする初恋の人、マルコは気持ち安らぐ家族のような恋人、だったのかな。身から出た錆とはいえ、普通に生きたい、普通に人から愛されたいと思ってた。ジャケットの写真、カッコつけて銃口にフッて息吹きかけてるのかと勘違いしてたけど、違った。ニキータは完璧で冷酷なスナイパーではない。踏み外した道から戻ってきて、懸命に自分の人生を生きようとしたチャーミングな女性だった。だからこそ、彼女がいない男2人のラストが、良かった。

細身の女性がピチピチの柄パンツ履いてデカ目のジャケット羽織るの、理屈抜きにかっこいいな。黒のミニスカドレスに大きなジャケット羽織るのも良い。
「何時に仕事終わるの?ご飯行かない?」なんて無邪気に聞ける女性、いいな。
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