でら

マイ・プライベート・アイダホのでらのレビュー・感想・評価

4.0
「アメリカはでっかい田舎なんだ」というあの台詞を思わせるような、どこまで続くかわからない真っ直ぐな道と果てしない麦畑から始まるシーン。アメリカってこういうところの方が多いんだよね。これは俺の道だと言ったマイク。彼の生きる毎日は一体どこまで続ければいいのか、夢も希望もない途方も無いものなんだ。
何故ナルコレプシーという病を抱えているのか、たったの30ドル稼ぐ為に、身と心を削るその日暮らしをしているのか。そうせざる得ない若者たちが集まる場所があるのも、まさに「子どもは親を選べないんだ」よな…。家に帰れず、帰る家もなく、帰りを待つ人がいないのがどんなに侘しいものか。マイクはああいう生き方しか知らなくて、しかも逃れる術も知らなくて、母の居場所も掴めず、兄も父も手に入れられず、明日の自分さえどうなるかわからない。マイクは自分には手に入れられるはずのない、『未来を選ぶ事が許されている』そんなスコットの奔放さに憧れて惹かれて、そうして恋心を抱いたんじゃないかな。
焚き火のシーンで言いにくそうにマイクがスコットに望んだものはとても些細なものに聞こえるけれど、マイクにとってはかけがえのない唯一の願い。でもそれを叶えてはやれない。ゲイへの理解も今よりもまだ乏しい時代に、よくこの映画を作り上げてくれたと思う。
リヴァー演じるマイクの姿がとても切なくて、どうにか彼に救いを差し伸べる手を与えてあげたくなってしまった。

20年以上も前の手法だし、あとあまり資金がなかったのかな?とも思えるそんな演出や、台詞の言い回しと、あとなにより字幕の訳が回りくどくて分かりにくいところがある。それでも映画の雰囲気がたいへん好み。シュールなシーンと明るい音楽が好きでした。
でら

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