JUN

マイ・プライベート・アイダホのJUNのレビュー・感想・評価

3.9
永遠の美青年リヴァー・フェニックスのロードムービー。実生活でも親友だったキアヌ・リーヴスとの共演作。
どうしてもこの作品を観ると、リヴァー・フェニックス本人に想いを馳せてしまう。不遇の美青年の一生や、キアヌとの二人の関係、残されたキアヌの想い…映画では才能ある若き二人がマイクとスコットという青年を、見事に演じてはいるのですが、そこに本当の二人の面影を見てしまう。

非常に叙事的で、まさにロードムービーというジャンルがふさわしい映画でした。社会の底辺で暮らす二人の若者の人生の葛藤。ナルコレプシーという難病(発作的に深い眠りに襲われる病)を抱えながらも男娼として生計を立てるマイク(リヴァー)と、市長の一人息子でありながらも、そんな社会の底辺とも取れるマイクとその仲間たちとつるむスコット(キアヌ)。
とにかく切なくて、決して楽しい作品ではありません。が、そんな二人が主人公の本作は、若さゆえの危うさだとか、愛の形だとか、自分の感情に向き合えないジレンマだとか。私たちの胸のどこかに確かにあるノスタルジックなカタルシスを感じるものでした。

やはり印象に残ったのは、有名な焚火のシーン。
その場面より以前は、男娼からした愛(=金)や個人間での愛ではない愛情を映していました。
しかし、焚火のシーンで、マイクは言います。

「君に近づきたい。君をもっと知りたい。」
それに対してスコットは、
「セックスは金のためだ。それに、男同士は愛し合ってはいけないんだ。」
と言い放ちます。
「わかってる。…でも俺は金をもらわなくても愛することができる。

君が好きだ。君が好きなんだ。」

切ない!!!恋愛ものでやはり心にグッとくるのは、「叶わないってわかってる恋」なんですよね。
それまでのやんちゃのシーンからは想像できないほど深刻に、辛そうに、怯えた子犬のように「君が好きだ。」と呟くマイク。その後、スコットはその告白に対してイエスでもノーでもなく、ただ「今日はここで一緒に寝よう」と提案します。そのスコットの優しさにも心がキュッと締め付けられました。

音楽もさることながら、画の作り方もおそらくすごくこだわっていて、主演二人の美しさも相まって終始目が釘付けでした。また、『トレインスポッティング』的な雰囲気が、この年代の映画っぽくて好きでした。
多くを語らず、画で見せるわけでもなく、ただチグハグに進んでいくストーリーもわたしは好きです。


この頃の二人は、きっと彼らにとって永遠だったし、私たちにとってこれからも永遠でしょう。
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