青山

かくも長き不在の青山のレビュー・感想・評価

かくも長き不在(1960年製作の映画)
3.8

カフェを営む主人公。ある日店の前を通りかかった浮浪者は、何年も前に戦争に行って以来消息の知れない彼女の夫にそっくり。しかし、彼は記憶を失っていて......。


これは凄い。
客観的に起こっていることは女が男をつけ回しているというただそれだけです。しかし、主人公の視点で映画を見る観客の内面には「彼は本当に夫なのか?彼は記憶を取り戻すのか?彼は今までどうしていたのか?」といった強烈なサスペンスが生成されます。そうなると淡々とした彼女と彼の会話にもヒリヒリする緊張感が流れて惹きつけられます。
そして、フランス映画らしい意味での衝撃的な結末に至って、本作の深みを突きつけられます。

そう、これは軍隊も銃も爆撃も一切出てこない戦争映画。戦争によって間接的に狂わされた、とある個人の人生を描いた反戦映画。
そして、そういう視点に比べると軽くなるようですが、桜木町にいるはずもないのに探してしまうような恋愛映画の側面もあります。
我々戦争を知らない子供たちにとってもある種共感できる部分も持ち、それ以上に知らないものをある側面から教えてもらえる、素晴らしい映画でした。と思います。
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