キットカットガール

ミス・ポターのキットカットガールのレビュー・感想・評価

ミス・ポター(2006年製作の映画)
4.0
性別、年齢、階級、このような教条的な記号が全てだった時代に芯の通った女性がいた。彼女の名はビアトリクス・ポター。かの有名な『ピーター・ラビット』の生みの親だ。本作はそんな彼女の伝記的物語。ストーリーはとてもシンプルだったけれど、見応えがあり心に残る作品だった。林檎のトレイベイクをつまみながらゆったり鑑賞するのにピッタリかもしれない。

32歳、独身、友なし、(安定した)職なし。そして、決して自分の意志は曲げず、とことん好きなものへ愛情を注ぎ続ける。現代では普通の女性像であっても、やはり20世紀初頭のロンドンでは変わり者扱いされただろう。それでも彼女は、流されずに自分の心に従い取捨選択をした。人と異なるという事実もきちんと受け入れて。そんな彼女は内に秘めた強さと野心、溢れ出てしまう独創性と喜怒哀楽を兼ね備えた魅力的な女性だった。女として生涯目標としたい。
勿論、これほどまで魅力的なのはビアトリクス本人の性格が近因しているわけだが、所感としてはレニー・ゼルウィガーの影響も大きい。レニーの笑い顔、泣き顔、作り話を語る時の表情、ユニークさと愛くるしさを含んだ1つ1つの所作。べらぼう可愛らしかった。又、彼女の顔立ちがクラシカルだったが故にすんなりと作品に入り込む事が出来た。良いキャスティングだったと思う。そして、最も印象に残ったのは、嬉し泣きのシーン。甘美でメルヘンな空間が確立されており、お気に入り。

久しぶりに心が浄化される作品と出逢えた。何歳からでも運命は巡ってきて、チャンスは掴めるのだと心底励まされた。人とは異なる思想が成功や素朴な幸せに繋がるキーとなる。兎に角、大人になったらヒルトップへ遊びに行こう。