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愛人ジュリエットのpikaのレビュー・感想・評価

愛人ジュリエット(1950年製作の映画)
4.0
カルネ作品をレンタルで見れる分だけ順に見てきてまさかこんなツボをくすぐる作品に出会えるとは、傑作過ぎて腰が抜けた!

始まった瞬間から最後まで徹頭徹尾素晴らしく、光と影のコントラストや生き生きとした人物の魅力、煌めく夢の中の街並と陰鬱とした現実世界の対比など、ひとつひとつに奥行きがあって画面が延々と面白い!

愛のために犯罪を犯し刑務所に入れられた青年が、牢獄の中で夢を見るとそこには「記憶を失った人間」たちの村があったという夢現つな物語の時点で最高だし、「まるで黒板を消すように」記憶が消えていく村人たちの描写やキャラクター性が面白い。
記憶に飢え渇望しながらも過去がないからこそ幸せそうであるというような反証性や、記憶が人物を作るのか記憶なき本質が行動を起こすのかという問いまで、哲学的なのにドラマチックで本当に素晴らしい!
おまけに「夢である」という演出法は、シンプルながらも後世の夢現つ映画への影響を感じられたりしてツボずくめ!

ジェラール・フィリップの叙情性溢れる感情表現や、記憶と本質の境い目を見事に表現したシュザンヌ・クルーティエの愛らしさなど、ドラマや演出、セットやカメラのみならず隅々美麗で素晴らしい傑作!
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