ベイビー

日本のいちばん長い日のベイビーのレビュー・感想・評価

日本のいちばん長い日(1967年製作の映画)
4.2
ずっと観たかった作品。

この映画は、終戦前日の昭和20年8月14日正午の御前会議から翌15日正午の玉音放送までを描いた作品。まさに「日本のいちばん長い日」だったわけで、その"長い日"をなるべく心に刻むべく、終戦記念日前日の今日、鑑賞しようと前々から決めていました。

観て良かったと思います。ただ観るだけでなく、こうして終戦を意識して、戦争を意識して作品を観れて本当に正解でした。

ポツダム宣言受諾をめぐる、政府首脳の画策と青年将校たちのクーデター。そして、昭和天皇の御意向が克明に描かれております。

終戦から22年後の1967年公開。戦争の記憶が生々しく残る日本人に向けたこの作品は、戦争の死者を悼み、戦争を嘆き、将校たちの愚行に遺憾の意を示したシビリアンコントロールなのだと思います。

戦争を知らない私たち。誰に感謝をすれば良いのか分かりませんが、このような作品で歴史を振り返り、先の戦争でたくさん方が亡くなった事実を忘れず、鎮魂の祈りを捧げることが、平和を受け継ぐ秘訣なのかも知れません。

少しレビューとは逸れましたが、そういう戦争の想いは別にしても、この作品は本当に素晴らしいものです。

とにかくキャストが豪華。僕が大好きな三船敏郎さんをはじめ、東宝のスターがズラリ。この時代の色んな作品で主役を演じたような方々が、アベンジャーズみたいな感じでたくさん見られます。

脚本は「七人の侍」をはじめ、黒澤映画を多数書かれてきた、橋本忍さん。ですから物語は重厚感があり、分かり易く面白いです。あの膨大な出演者とセリフをよくあそこまで分かり易くまとめたものだと感嘆してしまいます。

そして監督は、岡本喜八さん。本当、今観ても古臭さを一切感じない演出。構図、アングル、テンポ、などなど。全てが今の映画にも通ずる… いや、昨今の映画に影響を与えたと言っても過言ではないはずです。

現に「シン・ゴジラ」のテロップの多様は明らかに今作からのもの。そのことは前々から庵野秀明総監督も公言されていましたし、岡本喜八監督の写真も牧悟郎という役で作品に出しているわけですから、オマージュというかリスペクトの深さが、そのことからでも感じられます。

とにかく観てほしい、知ってほしい。
目を背けたくなるような場面もあるけども、それが真実だと思って心に刻んでほしい。

戦争を経験された方々が創り出した、戦争を終わらせる映画。

将校たちのクーデター騒ぎには正直ムカムカしましたけど、誰かのセリフで救われました。

「今日は日本帝国軍の葬式だ」と…

日本帝国軍の死(終戦)をもって、間違いの時代は葬り去られたのだということ。

終戦の日というのは、その過ちを忘れてはいけないということ…
ベイビー

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