もやし

ハンナとその姉妹のもやしのレビュー・感想・評価

ハンナとその姉妹(1986年製作の映画)
5.0
ウディ・アレン監督の名作。
人生の滑稽さ(俺の経験値では何様)をいつもの視線で描きつつも、人生悪くないじゃんみたいな(これも何様)。要はある程度年齢重ねた人じゃないと本当の意味では刺さらないと思う。夜酒飲みながら一人でボーッと見てると結構じんわりすると思う。(俺もした)



ハンナを長女とした三姉妹。皆それぞれ全く違うタイプで、皆それぞれ魅力的。
意外とドロドロはしてないです。トラブルは多いけど、そんなに嫌な気にはならない。
ハンナの旦那が次女と不倫したりと、事実だけ見ると色々と酷いけどね……笑


そしてハンナの元旦那として独立して出てくるウディ・アレン演じる心配性で鬱気味の男。
人はいずれ死ぬのに生きてて何の意味があるのか。死ぬのがたまらなく怖い。そしてどんどん鬱を深めてゆく……



俺の立場で言えることじゃほんとないんだけど、人間模様が本当に滑稽で滑稽で…
人間の駄目な部分が濃縮されてます。
でも模索し続ける姿勢に変わりはなく、それを滑稽と呼ぶのは違和感があります。それが人生の正体なのでしょうか。


個人的には三女のちゃらんぽらんな感じ共感しました。何者にもなれなくて、でも自分は絶対凡人じゃないんだ、というか、凡人じゃ終われないんだ、という何かに追われてる感じ。(まんま俺…)
そんな妹にも金銭的な支援もして、ずっと相談にも乗って、終始皆に親身なハンナが比較的酷い目に遭ってて、そこが何ともよね笑 まあ周りにはあんたのそういう完璧なところが嫌なんだと言われてたけど…

そうだ一番伝わってきたのは、どんな人も皆不完全で、考えながら、支えながら生きてるんだってこと。そこに心打たれました。



人は何のために生きるんだとかとか、愛って何なのかだとか切り込んで描いてくれてるんだけど、個人的にはそこは今は納得いかなかった。
これって「あまり深く考えるな」に他ならないよね…
ここまで本気なテーマ設定してるのに、考え始めたら終わり、で済ませちゃうのは、納得いかない…!

…まあウディ・アレンも哲学から宗教からありとあらゆるものを試した末にあそこまで辿り着いて、だから、ね、だけど…

良い歳して人生における歓びだの生きる意味だの人生の目的だので本気で悩んでるのってかなりの少数派なんだろうなって…

俺もこの映画みたいなフワッとしたロマンティシズムに包まれた世界観で生きていきたい。幸せなラストだったな。
もやし

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