れもん

ドラえもん のび太と翼の勇者たちのれもんのネタバレレビュー・内容・結末

2.5

このレビューはネタバレを含みます

2001年公開の『ドラえもん』の映画シリーズ22作目。
21世紀最初の作品である。

開始直後2分以上、セリフは一切無く、荘厳な雰囲気の歌声をバックに様々な鳥の映像が流れ続ける。
なかなか期待感が高まる始まり方。

そして、しずかの家で「世界の渡り鳥・野鳥分布図」を作成しているのび太、しずか、ジャイアン、スネ夫、出木杉のシーンへ。
このメンバーの中に出木杉もいるのが良いね。
ジャイアンに馬鹿にされるのび太を庇って世界の鳥人伝説について語る出木杉は、優しく賢い少年。
たまには出木杉も冒険に参加してほしかったりする。

しかし、期待感が高まる始まり方をした割には、個人的に今作は今まで観てきたシリーズの中で一番イマイチな出来の作品だった。

まず、グースケはじめ鳥人たちのデザインがあまりにも垢抜けない。
本当に21世紀の作品か?と疑うレベル。

また、鳥人たちが住むバードピアにおける人間の扱いがあやふやで、警備隊は容赦なく追いかけてくるのにタクシーは逃亡を助けてくれるというよくわからない展開があったりする。
人間がバードピアに足を踏み入れるなんて異常事態のはずだし、警備隊の反応こそが正常な反応だろうと思った。

そして、グースケが飛べない理由が身体的なものでなく精神的なものなので、人力飛行機を使いレースに参加するのはずるい、という周囲の意見も一理あるように思えてしまう。
ミルクがピンチに陥ってもグースケはミルクを助けずレースを続けるというのも、グースケはミルクのピンチが生命に及ぶレベルだったと知らなかったのだとしても、ちょっと薄情すぎるように見えた。

さらに、全体を通して、ひみつ道具の使い方や扱われ方に違和感がある。
のび太が自作の翼で飛ぼうとしている時にはバードキャップを出さないのに、バードピアに着いた途端にバードキャップを出すドラえもん。
人力飛行機の修理にはタイムふろしきを出さないのに、石板の修理には出すドラえもん。
ホウ博士が石板を解読しようとしている時にはほんやくコンニャクを出さないのに、ホウ博士がいなくなったらほんやくコンニャクを出すドラえもん。
そもそもほんやくコンニャク無しで鳥人たちと会話できるのも謎。
ドラえもんのひみつ道具は使い捨てやレンタルがほとんどらしいので、フェニキアとの戦いで桃太郎印のきびだんごを使わなかったのはたまたま持ち合わせが無かったからだとなんとか納得できるにしても、バードキャップ、タイムふろしき、ほんやくコンニャクに関しては持ち合わせがあったのに使わなかったのだから違和感がある。

もしかしたら、描きたいシーンやストーリーの流れに沿うようにひみつ道具を使わせているから、これだけ違和感があったのかもしれない。
そのぶんストーリーが面白ければいいけど、イカロスが存命であることも、投獄されていることも、バードピアがパラレルワールドであることも、22世紀の人間によって作られたことも、全てが唐突すぎてついていく気になれないストーリーであった。
言うことを聞け!と叫ぶだけでフェニキアが言うことを聞くと思っているジーグリードもアホすぎる。
それこそ桃太郎印のきびだんごくらいは用意してからフェニキアを復活させないと。

とにかく、あまり楽しめる作品ではなかった。
猫とわかってもらえて喜ぶドラえもんと、スネ夫になつくグースケの弟は可愛かったけど。

ちなみに、ギリシア神話に登場するイカロスは、傲慢さ故に命を失った反面教師的な人物であって、決して勇者や英雄ではないはずなんだけど…

【2022.08.09.鑑賞】
【2022.08.10.レビュー編集】
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