ヤマシン

ブラックキスのヤマシンのレビュー・感想・評価

ブラックキス(2004年製作の映画)
3.7
手塚眞監督作。

夜は汚い部分を隠してくれるから好き、と作中でルーシーが言っていたように、夜を基調にしたビジュアルはとても好きでした。光り輝くネオンライトをはじめ、血すらも芸術っぽく見える。インテリアや人形などはどこか不気味で余計に意味ありげに見える。

小物をはじめ、たくさんの凝ったセットに最初は興奮したのっだが、時間がたつごとに、その多さに少ししんどくなるは否定できない。
ミステリーやサスペンスの要素がメインの映画だったと感じたが、そうであればもう少し背景は抑えて、人情にフォーカスを強めにあてたほうが良かった気がする。
また、できれば画だけでわかるような人物構図を作ってほしかった。名前をすぐ覚えられない自分にとって、顔と名前をリンクさせるだけでかなりの労力を使ってしまった。
映っている画ではなく、「誰が何をしたのか」ということばかりに頭が向かってしまう。
この辺は、自分の見る力が不足していることも否めませんが。

そして、肝心の真相が脱線しているように感じた。
映画であれど、そんなむごい事をできる人間ってどんな人物なんだ。
この登場人物のなかの誰がそんなことできるんだという好奇心は見た人全員がもったはず。
そしてシナリオもその好奇心を終盤まで引き立ててるように進めておきながら、一気に突き落とす。
監督の解説を聞くと、そういう話もアリかとは思うが、
野球で9回になって相手チームがなんで9回まで戦わないといけないの?と言って試合放棄しだすみたいな感覚。

ルーシーというキャラクターはとてもかっこよくて、アウトローで自分の信念は曲げないが、弱いものにはつい優しくしてしまうという設定なんかとても好きだ。その役に違和感を感じさせなかった川村カオリは自身もそのキャラクターと共通する部分があったのだろう。
内面からにじみ出るものがあった。
そんな彼女が今は亡くなっているということを初めて知ってショックだった。今彼女が生きていたら、間違いなく出演作品全てチェックしてただろう。
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