幕のリア

鬼婆の幕のリアのレビュー・感想・評価

鬼婆(1964年製作の映画)
4.0

深く 暗い
太古から 現代へ
闇を通して 通じる

草原に潜む穴を映し、かような散文が踊る。

鬼婆のタイトルとフリージャズで始まる新藤兼人作品。

時は、湊川の戦いのあった建武の頃。

ススキが原で繰り広げられる人間模様と幽玄な寓話。

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乳放り出して獣のごとき息遣いの乙羽信子。
蟹が描かれた着流しが洒落てる。

美少年かと見紛う容姿の吉村実子、
性衝動と奔放な肢体を晒し、「豚と軍艦」で見た力強い視線がモノクロに彩りを添える。

佐藤慶は珍しく豪放で自由奔放な与太者を演ずる。

クライマックスへのホラー的で演劇的仕掛けが妖しく美しいのだが、唐突な幕切れも含め滑稽でもある。

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特典映像は佐藤慶による本作撮影基地を捉えたプライベートフィルム。
千葉県印旛郡安食のススキが原の中に拵えられたトタン屋根の仮設長屋、浴場、厠。
佐藤慶のナレーションと音楽があれば充分に映像作品足り得る。

オーデオコメンタリーは新藤兼人、吉村実子、佐藤慶による
当時の制作費1500万円、今の貨幣価値で言うと
3億円くらいという。
低予算と語られる金銭的な物差しの違いだけでなく、作品にかける品格の差が様々なコメントから滲み出ており、瞠目に値する。

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この時代を描いた小説では、北方謙三の「悪党の裔」などがエンタメ性もあり、面白い。
幕のリア

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