ひろぱげ

フィメール・トラブルのひろぱげのレビュー・感想・評価

フィメール・トラブル(1974年製作の映画)
4.4
ジョン・ウォーターズといえば、あの「ピンク・フラミンゴ」やみんな大好きな「シリアル・ママ」で有名な、[変態・お下劣・悪趣味・カルト・モンド]映画の巨匠であるが、他にも心憎い傑作の数々を撮っている。
この「フィメール・トラブル」もその一つ。「ピンク・フラミンゴ」のキチガイ・パワーの陰に隠れがちではあるが、なかなかどうして、結構いい感じでイッちゃってるイイ映画だ。

巨体のドラァグ・クイーン、ディヴァイン扮するドーン・ダベンポートなる女の痛快な半生。
高校生時代、授業には平然と遅刻。早弁で特大サンドイッチをかぶりつけばチクられ「もう食べません」と50回黒板に書かされるも彼女のデブをからかうクラスメートの髪の毛ひっつかんでヤキ入れるようなクソ少女だ。クリスマス・プレゼントのおニューの靴が気に入らず、両親を張り倒した末に家出(着の身着のまま、フワフワのスリッパのまま家を飛び出した時の、ノーテンキなクリスマスソングのBGMがステキすぎ)。しがない工員のオヤジ(ディヴァインの二役)にとっ捕まって犯される(ディヴァイン一世一代の一人二役デブ・ファックシーン)と、それで子供が出来ちゃう。(安モーテルで自力出産。ヘソの緒は自分で噛みちぎっちゃう野獣ぶり。)
シングルマザーとなったドーンは、ウエイトレス、デブ専ストリップダンサー、コールガールと職を転々とし、ついにはオイハギで生計をたてるようになる。
反抗期の娘には、ベッド縛り付けの折檻や、「服を汚してまで産んでやったのに」とナイスな説教。
育児ノイローゼ気味のドーンに「イケメンのいる美容院に行けば?」と友達がアドバイス。これが人生の転機となり、美容院のイケメンとの結婚、夫の浮気、離婚、そして美容院のオーナー夫妻に妙に気に入られて唆されたドーンは「私スターになる」とトンチンカンな思いこみに突っ走る。オーナー夫妻の「犯罪写真」のモデルとして、嬉しそうにアホ・ポーズをとり続けるドーン。。。。。。
その後も、硫酸ブッカケられ、ババアの腕切断、娘殺し、そしてクライマックスの「殺人ショウ」へとドーンの快進撃は続く。エンドタイトルまでひとときも目が離せない。ブラボーである。オープニング&エンディングの「フィメール・トラブルのテーマ」(歌:ディヴァイン)も頭から離れない。

なんと言っても、ディヴァイン!!最高である。とにかく、目立って、フラッシュ浴びて、みんなの声援に包まれるためなら何処までも突き進む勘違いデブ・ブス女を喜々として演じ・・・っていうかもうとことんイッちゃってる。もしかしたら「ピンク・フラミンゴ」よりもぶっ飛んでいる気がする。
脇をかためるのもジョン・ウォーターズ映画常連の皆様方。特に素晴らしいのは、イケメン美容師を溺愛するババア役のエディス・マッセイだろう。彼女は「ピンク・フラミンゴ」の愛すべき卵オバチャンでお馴染みの人。デブで歯はガタガタでちょっとフリークスギリギリの風体がJW映画にはぴったり。本作では「叉焼スーツ」でバッチリきめてディヴァインと五分で渡り合うのがカッコイイ。

変、異常、醜悪、マトモじゃないことの素晴らしさを教えてくれるジョン・ウォーターズとディヴァインは永遠に僕らの胸の中で輝き続けるだろう。
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