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幸福(しあわせ)のamのレビュー・感想・評価

幸福(しあわせ)(1964年製作の映画)
4.0
美しすぎる家族の映像と木管アンサンブルのどこか不穏な響きで始まるオープニングが、早々に「この映画はただ者じゃないぞ」という予感を与えてくれる。

一般的な社会通念に照らし合わせれば、フランソワ(夫)は大バカ正直で最狂に能天気な自己中浮気クソ野郎であり、お前マジか…と思わされる言動のオンパレードなのだが、
いわゆる"社会が要請する倫理観"的なものを一切取り払った時に彼をどのように断罪できるかと聞かれたら、私はちょっと考えてしまう。ピュア過ぎる精神がもたらした悲劇を罪と見なせるかどうか。

それにしてもここまで配色で語る事を徹底した映画は初めて見た。
青・赤・黄(中でも特に青)を基調とした意味ありげな色使いが代わる代わる提示されるので、どの描写も絵画のように美しいのに、いちいちそこに込められた意味を考えてしまって終始気が休まらない。服の色の組み合わせにゾッとさせられるという、新手の恐怖体験。
女性二人は、基本ニコニコしているだけに少しでも表情に陰りが見えたその一瞬がかなり怖い。穏やかに流れる時間の中に見え隠れする破綻の予兆を常に探しながら見てしまう。

妻テレーズと浮気相手エミリーのキャラクターがどちらも記号的であるだけに、フランソワが双方に囁いた「幸せ」の意味が最後まで抽象的にしか聞こえず、それもまた不気味だった。
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